インフレーションになる原因は貨幣供給の調整にあった

何が原因でインフレになるのか、インフレになると国民経済にどのような影響が出てくるのかを解説します

目次

インフレーションになる原因は貨幣供給の調整にあった

[box class=”green_box” title=”記事の内容”]何が原因でインフレになるのか

クリーピングインフレ、ギャロップインフレ、ハイパーインフレの解説

ベネズエラはなぜハイパーインフレになったのか

インフレの予測重要性
フィッシャー方式
国の物価の決まり方
ディマンドプルインフレーション
コストプッシュインフレーション
スタグフレーション

これらを解説していきます[/box]

インフレーションとは

インフレーションとは、物価の持続的上昇をいいます

Inflation 膨らむや膨張するという意味があります。略してインフレと言っています

インフレの何がいけないのかというと、一度のみ物価の値段が上昇して安定するのであればいいのですが、そのまま物価が上昇し続けることが厄介なのです

インフレの根本的な原因は貨幣量の過剰な供給です

インフレーションの種類

インフレーションは上昇するスピードによって3つに分けられます(%は人によって異なる)

クリーピングインフレーション:年2〜4%
CREEPとは、這う、ゆっくり進む、忍び寄る

ゆっくり徐々に迫ってくるような物価の上昇をいいます

ギャロップインフレーション:年10%以上
GALLOPとは、馬の歩調、速く進む

これは馬や人が歩くぐらいのスピードで上昇することを言います

ハイパーインフレーション:年26%以上(年間約30%、3年間で100%、物価が約2倍になる計算)
HYPER~ ものすごい、超~

通常では考えれないスピードで上昇します

経済学的に人が感じる上昇の速さを例えているだけです。 このように3つに分けていますが、明確な区分わけはありません。

世界で最もインフレの激しい国

インフレ世界一で言えばベネズエラです。引用を見てください

南米ベネズエラの議会は9日、2018年12月の物価上昇率が年率169万8488%だったと発表した。マドゥロ大統領は10日に2期目の就任式を予定しているが、米国が追加経済制裁を発動するなど圧力を強めている。経済立て直しのメドは立たず、ハイパーインフレが沈静化する兆しはない。

月間の物価上昇率は141%だった。11月か微減したものの、依然として物資や外貨不足により、物価上昇が止まらない状態が続いている。国際通貨基金(IMF)は19年中にインフレ率が年率1000万%に達すると予測している。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39838900Q9A110C1EAF000/ 2019/1/10 ( 日本経済新聞より)

年間上昇率 169万8488% もう次元が違いすぎます

ベネズエラはなぜハイパーインフレになったのか

ハイパーインフレになった根本的な原因は、ベネズエラ大統領にあります

大統領がお気に入りの軍人に経済を任せたのが発端です。つまり市場経済を支配するため、軍人を投入し、元居た経営者たちを首にします

ところがこの軍人は経済どころか、経営すら知らないド素人。もちろん上手くいくわけがありません

軍人は 国民から支持されたいために、 地位や名誉のためにお金をばらまき始めます

もちろん、そのようなことをすれば国民から支持されたかもしれませんが、経済を知らないので、大量な貨幣供給が諸刃の剣となりました

そんなことを続けていたので、国民が提供できる生産量を上回ってしまい、お金を持ちすぎた国民は、消費を求め物を買い始めます

ですが、生産供給が追い付いていないので、当然物価の価値は上昇していきます

しかも貨幣を大量にもった国民は物資を求めるので、逆に物価の上昇となりお金の価値が無くなり、ついにはハイパーインフレとなります

ハイパーインフレとなった原因は、国が生産できる供給量を上回る貨幣を、市場にバラまいたのが原因です

しかも社会主義国の反米国家なので、アメリカから経済制裁を受けており、当分続きそうです

インフレ予測の重要性

インフレの予測ができるか、できないかで重要性が大きく異なります

どういうことかというと、人は合理的に行動する、を前提として現実経済を考えるからです

つまりインフレがくる、と予想がつけば対策がうてるわけですが、予想外のインフレがくることがあるのです

予想外のインフレ

ところが予想外のインフレが来てしまうと『こんなはずじゃなかったのに』
となってしまいます

物価の上昇率を予測出来なかったことで、大きな損失が出てきます

人は合理的な行動をとる、と分かっていれば合理的な対策をとるのですが、人々がインフレを考慮しない行動をとったことで非効率が生じてしまうのです

それと同時にインフレは、物価の価値が上昇し、貨幣価値を下げてしまいます。例えば、1000円で買える物が減ってくるわけです

インフレは貨幣価値の減少なので、将来、もしくは毎年一定額の金額を受け取る人は損失が出てしまうのです

例えば、年金を受け取る人や、建物の管理者である債権者などです

逆に債務者、借金している人は有利になるのです

例えば、3千万貸したけれど、翌年物凄いインフレが起きてしまい、3千万の価値を持たなくなった。つまり物価の上昇により買える数が少なくなった

つまり借りている人が有利になります。返済額が実質的に目減りするからです

このように予想されないインフレは、債権者に不利、債務者に有利となり、インフレにより所得を再度分配する機能が働くので、所得再分配効果となるのです

フィッシャー方式とは

フィッシャー方程式とは、利子率の計算方法の事をいいます。金利には2つあり、名目金利と実質金利があります

名目金利とは、表面上の金利をことで、契約する時などに年金利12%と決めることです

実質金利とは、実質的な負担をいいます。例えばインフレ率が10%であれば、物価も給料も毎年10%全てのものが上昇します

契約の金利が12%って横暴じゃないの、と思うかもしれませんが、給料も翌年には10%上がっているので、返済する負担が10%下がり、実際負担する金利は楽になります

これをフィッシャー方式にあてはめると

実質利子率=名目利子率12%-インフレ率10%=2%となります

実質利子率2%となるのです

予想されたインフレ

人は合理的な行動をとると考えます。 これはさっきとは逆で、予測できるインフレを考慮します

例えば、インフレ率が年間5%だとすると、物価も給料も5%づつ上がっていきます。そうなると実質的な給料は変わらないとなります

銀行などお金を貸す側にとっては、実質利子率が3%欲しいとなると、そのまま名目金利を3%のまま貸し出すと大損するわけです

インフレ率5%と実質利子率3%を足して、名目金利を8%にして貸出すことが出来ます

インフレが予測されていると、このように合理的な行動で対策が打てるのです

ですが予想されていたとしても困るのがハイパーインフレです

ハイパーインフレ

ハイパーインフレになると、かなり厄介なことになります

年間約30%なので、すぐ物価が2倍以上になってしまいます。そうなると貨幣で払っても価値が無いので物々交換となります

事実上の貨幣経済の崩壊になるのです

ですが今はグローバル経済なので、ドルやユーロを国内に流通させ、価値の安定した取引が出来るようになっています

カンボジアがドルで安定している国です。ベネズエラもそうなればいいのですが、アメリカから経済制裁中なのでドルが流通せず、国民は苦しんでいる状態なのです

緩やかなインフレが、現実経済にふさわしいのです

現実の世界

実際人々は合理的に行動するとはかぎりません。物価や給料の上昇なども同時とはなりません

もしインフレとなると、物価が先に上昇してくるので、給料や年金などは遅れて上がってきます

そうなると、物価が先なので給料や年金が後となると、上がってくるまでは負担を強いられるとなるのです

今の日本の超デフレでは、インフレ化することすら絶望的です

物価の決まり方

通常市場の価格の決まり方というのは、需要量と供給量の交わる点が価格が等しくなる、となっています

需要供給曲線に関する詳しい記事はこちらです

[kanren postid=”4523″]

ミクロ経済ではこのように考えますが、マクロ経済では一国経済として考えます

通常の需要供給曲線

需要供給曲線

このグラフを一国経済に当てはめると

総供給曲線というのは、国民が生産できる全ての供給量となります
総需要曲線というのは、国民が消費する全ての需要量となります

この2つの交点が、国の物価の価値を決める、となるのです

横軸が国民所得GDPとなっていますが、GDPというのは国内総生産のことであり、全国民の所得の合計でもあるからなんです

だから国民所得となっているのです

国内総生産GDPに関する詳しい記事はこちらになります

[kanren postid=”6000″]

ディマンドプル・インフレーション

ディマンドプル・インフレーションとは、需要の持続的上昇のことをいいます

ディマンドプル・インフレーション

これをみると、需要が上に上昇していくと、需要が拡大することになるので、AD→AD’→AD”と総需要が右上にシフトしています

それと同時にP0→P1→P2とインフレ率も上に上昇し、Y0→Y1→Y2と国民所得も横に移動しています

消費が増えれば、物価も同じように上昇するということです。これが緩やかだととても安定した経済となります

コストプッシュ・インフレーション

コストプッシュ・インフレーションとは、生産費用を原因としたインフレーションの事を言います

コストプッシュ・インフレーション

これをみると、生産費用が上昇すると、供給も同時に上昇していきます

なぜかというと原価費用、つまり生産費用が上がる分、価格もそれに応じて売らないと割に合わず赤字になるからです

価格上昇することで、AS→AS’→AS”と総供給が上にシフトしています。価格上昇によりインフレ率も上がっています

ただし、国民所得が減っているのです

スタグフレーションとは

スタグフレーションとは、国民所得が減少していくのに対して、物価が上昇していくことです

これはとても最悪のことです

ですが、かつて日本はこの状況を経験しています。それが1974に起こった第1次オイルショックです

オイルの供給量は輸入に頼っていたので、数が限定されてしまうと、もちろん値段は急上昇、所得は追い付けず、物価ばかりが上昇し、所得は減少します

このようなコストプッシュ・インフレーションは、生産費用が原因で起こっている現象なので、インフレ率を抑えるためには、生産する従業員の賃金を抑制するのが効果的なのです

実際には政府が国民の賃金を抑えることができるのか、という疑問もあります

貨幣要因でインフレになったケース

第1次世界大戦後のドイツは、大量の札束をバックに入れて生活していたり、第2次世界大戦後の日本は、町が破壊されたせいでモノを生産できず、日銀が貨幣ばかりを刷ったので、戦後の日本もハイパーインフレを起こしてしまいました

これは貨幣供給量を大量増発したのが原因といわれています

まとめ

インフレーションは持続的な物価の上昇である

インフレを起こすと貨幣価値が減少し、債権者は不利となり、債務者は有利となる

インフレが予測できると、合理的な対策ができるようになる

国の物価の価値は、総需要量と総供給量によって決まる

ディマンドプルインフレーションは需要、所得、物価の価値が上昇し、程よい経済成長となる

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この記事を書いた人

ビジネス、経済、心理学、簿記3級、起業、ドラムなど15年以上勉強してきた知識や情報、資格と知識の特化型ブログを発信中。

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