ゲーム理論のナッシュ均衡とは、お互いの利益が硬直状態になることです。数字を使った駆け引き戦略を解説します。
このような悩みを持っている方は必読!
ゲーム理論を教えてほしい。
ナッシュ均衡をくわしく教えて
囚人のジレンマやトリガー戦略を教えてほしい
これらの悩みを全て解決できます。
よく街中に行くと
他社よりも1円でも高い場合は、教えてください
他社よりもお得な価格で提供します
この様な看板やセリフ、CMなど見たことないですか?
これはお客さんに向けて言ってません。同業他社に向けた宣戦布告です
自社の利益を維持するための経営戦略です。お互いが硬直状態になる事をナッシュ均衡と言います。
ゲーム理論のナッシュ均衡は寡占市場でないと成立しません。なので寡占市場の定義を知っておく必要があります。
これらを理解できれば問題解決です。
ポイントは5つです。
- 寡占市場の定義
- ゲーム理論とは
- ナッシュ均衡とは
- ゲーム理論のナッシュ均衡
- 相手を意識した戦略
では具体的に解説していきます。
寡占市場の定義
ゲーム理論を理解するには、寡占市場を知っておく必要があります
寡占市場とは、完全競争市場や独占的市場とは全く違う、限られた業者のみが競争する市場です
分かりやすく有名なとこで言えば、皆さんが使っている携帯会社docomo、SOFTBANK、auです
この3社を分析すると
- 売り手、買い手ともに多数存在
同業他社はほとんど存在せず、事実上3社のみとなっている - 商品の同質性
スマホ製品の質はどれも同じなので、ここでは料金設定やその会社のルールなどです - 情報の完全性
3社ともに同じような行動をしているので、ある程度の情報共有は出来ていると見られます - 市場への参入、退出が自由
携帯事業というのはまず、電波の確保、回線、ネットなど、あらゆるインフラ設備が必要になり、莫大な資金がかかることから、簡単には、参入や退出は容易なことではない
このことから、市場は完全競争市場にはならず、3社のみが独占する寡占市場になります
市場の値段も生産量も3社が決めているということになります
寡占には4つの特徴があります
寡占市場4つの特徴
1、価格支配力がある。市場を少数で独占しているので、新しい価格プランを設定すると価格に影響力がある
2、ライバルの影響を受けてしまう。ライバルの情報はつかめないので、相手の打ち出す戦略に、苦戦を強いられる。需要を保つために相手と同じような戦略を取らざるをえない
3、価格の硬直維持。お互いがにらみ合っているので、何かすれば反撃を食らってしまう心理が働き、結果、価格が維持される
4、非価格競争が激化。価格以外にコマーシャルやアフターサービスなど工夫戦略が激化しています(CM競争激化)
この様にお互いが影響を受けあう状況を寡占市場といいます。
ゲーム理論とは
お互いに影響を与え合うメンバー同士で意思決定を分析する理論です。ゲーム理論は様々な場面に使えるのですが、今回は寡占市場にあてはめます
ゲーム理論の3要素
皆さんは良くゲームをされると思うので、ゲームの設定で例えて見ます。僕も好きでFPSをよくやります。それは関係ないですね
- プレイヤー:意思決定を行う主体=企業の事
- 戦略:各プレイヤーの選択肢=価格維持と値下げ
- 利益:特定の戦略を選んだ結果=利益や利潤
ゲームには
1:協力して全体利益の最大化を考える協力ゲーム
2:自社利益の最大化だけを考える非協力ゲームが存在します
ではこれまで説明してきた寡占市場とゲーム理論、この2つを組み合わせてまとめてみましょう
寡占市場とゲーム理論
寡占市場とは供給者が少数である市場であるので、お互いの行動が影響しあう。このことを戦略的相互依存性といいます
ライバルの出方によって自社の利益も変わってくるので、情報が不確実性となります。
情報が不確実になると、特定ライバル企業の行動を予測しながら戦略を考えることになりゲーム理論が成り立ちます
この非協力ゲームの戦略がナッシュ均衡です。
つまり自社の利益を最大まで維持する戦略がナッシュ均衡となるのです。
ナッシュ均衡とは
ナッシュ均衡とは、非協力ゲームにおいてゲームの参加者全員が、相手の戦略に対して最適な戦略を採用している状態をいいます
均衡とは落ち着いていて変化が無い状態をいいます。自社にとって損失が一番少ない戦略をとる、が優先されます
例えば、現代の核兵器の保持がまさにナッシュ均衡です。お互いが持っていても、打ちさえしなければ向こうは打ってきません
その代わり、売てば反撃してくることを分かっているので、にらみ合いが均衡している。つまりナッシュ均衡となります
お互いが打たなくても、打ち合いしてもナッシュ均衡となります
ナッシュ均衡は複数の場合もあれば、ない場合もあるのでナッシュ均衡が全て望ましい状態とは限らない
ちなみにジョンナッシュという方が考案した戦略で、1994年にノーベル経済学賞を受賞していて、映画化もされています
ナッシュ均衡は表を使って説明できます
この表は利得表と言い、複雑に3〜4社が絡むと複雑になるので、分かりやすくするため2社のみで説明していきます
利得表
利得表には条件があります
供給者が少数である事
お互いが影響を及ぼし合う関係(戦略的相互依存性)
利潤は他社によって変わってくる
自社とライバルの戦略全ての組み合わせで予想される損益を数字化した表
この表を使って戦略を考えます
ゲーム理論のナッシュ均衡
見方はとてもシンプルで分かりやすい表です
ナッシュ均衡とはどのような時になるのか説明します
β企業がB1を採用、α企業もA1を採用した時、お互いの損失は無いので現状維持になります
B1とA2 の時
β企業がB1を採用、α企業がA2を採用した時、 βの利得は-8となり、βの損失が大きいので、β企業はB2を採用し‐5、-5の状態になりナッシュ均衡が成立します
B2とA1 の時
β企業がB2を採用、α企業がA1を採用した時、 αの利得は-8となり、αの損失が大きいので、α企業はA2を採用し‐5、-5の状態になりナッシュ均衡が成立します
パターンが変わるナッシュ均衡
上記のパターンだと、どっちを選んでも-5、-5となり、右下になります。ナッシュ均衡はお互いが同じ利益になるだけじゃん、と思うかもしれませんが、そうでない場合もあるので見てみよう
β企業がB1を採用、α企業もA1を採用した時、お互いの損失は無いので現状維持になります
B1とA2 の時
β企業がB1を採用、α企業がA2を採用した時、 βの利得は-2となり、βの損失が大きいのですが、β企業はB2を採用すると‐5、-5の状態になりβ企業の損失は-2から-5になるので、B1とA2のままとなりナッシュ均衡が成立します
B2とA1 の時
β企業がB2を採用、α企業がA1を採用した時、 αの利得は-2となり、αの損失が大きいのですが、α企業がA2を採用すると‐5、-5の状態になりα企業の損失は-2から-5になるので、B2とA1のままとなりナッシュ均衡が成立します
以上までがゲーム理論のナッシュ均衡の解説です。ここからは他の戦略も解説します。
相手を意識した戦略
ナッシュ均衡は自社の利益を優先して戦略を立てますが、それとは別に相手を意識した戦略もあるので説明します
支配戦略
支配戦略とは、相手がどの戦略をとっても、常に最適な戦略の事を言います。例え自社がマイナスになっても、相手のマイナスよりも低ければ、マイナスを選ぶ戦略法です
同じ利得表を使って説明します
β企業の支配戦略
β企業がB2を採用した時+5になりますが、αは‐8になりα企業は損失が大きくなります(左下)
ですがα企業もA2を採用する(右下)と‐5、‐5となります。B1の-8よりもマシになるので、相手がどのような戦略をとってきても、B2戦略は絶対変えない強硬姿勢を支配戦略と言います
強硬姿勢を取る戦略なのでナッシュ均衡とはまた違います
α企業の支配戦略
α企業がA2を採用した時+5になりますが、βは‐8になりβ企業は損失が大きくなります(右上)
ですがβ企業もB2を採用する(右下)と‐5、‐5となります。A1の-8よりもマシになるので、相手がどのような戦略をとってきても、A2戦略は絶対変えない強硬姿勢になります
単純に逆になるんだなと思えば大丈夫です。右下の-5、-5のようなお互いが同じ損失を受けることを支配戦略均衡といいます
各自、利益が-5、-5のように最大にならないことを囚人のジレンマと言います
囚人のジレンマ1
これをみるとB1とA1の合計は0なので、利得は最大になり最適資源配分といえます
ですがA2とB2の利得の合計は-10なので一番小さくなっています。つまり各プレイヤーが支配戦略を選んだ結果、自分達の利得は最小になってしまった
このように支配戦略均衡が社会的に最適資源配分にならないことを囚人のジレンマといいます
囚人のジレンマ2
なぜ囚人かというと、お互い捕まった2つの企業が黙秘していれば、お互いの犯罪はばれないのだが、1人が司法取引をすれば逃れられると思い、自白すると実はお互いが同じ自白をしていた
支配戦略均衡=囚人のジレンマと覚えておきましょう
フォークの定理
フォークの定理とは、昔からの言い伝えで囚人のジレンマのような共倒れをやめて、その状況から脱却し、社会的に望ましい状態にする
望ましい状態とは現実の均衡の事です
例えば、隣の村に襲撃に行って財産を奪って儲かっても一回で済むならいいのですが、必ず報復され奪われてしまいます
つまりこっちが仕掛けると、向こうもやり返してくるので、お互い何もしない方が逆に平和になる、ということです
囚人のジレンマから脱出して、社会的に望ましい状態になぜなるのか。その理由の1つがトリガー戦略です
トリガー戦略
このトリガー戦略は、相手に対して、もし何かやるならこっちもやるぞ!という戦略です。ライバルが一度でも裏切って非協調戦略を採用したら、その後は永遠に非協調戦略を採用する戦略のことです
このトリガー戦略は核兵器にも使われています、もし核を打ってくるなら、こっちも打ち返す、というような抑止力にもなるのです
裏切った代償を大きくすることでライバルに協調戦略を仕向けるのです
裏切った時の利得表
まず企業βが裏切ります。B1からB2に戦略変更
報復に出た時の利得表
企業αが報復にでます。A1からA2に戦略変更
裏切った結果
結局裏切った時には、+5となるが、報復されてお互いが-5になってしまう
裏切りと協調
βもαもどちらが裏切っても、その時は+5の利得は得られても、 お互いが報復すれば-5の状態が継続してします
結局、協調によって0の方が良いと考え、最大の利益が継続される
協調性のメリット
トリガー戦略は相手の報復に出る戦略と言いましたが、相手が値下げしたからと言って自分も値下げすると痛い目にあいます
お互いが痛い目に合うことは十分に分かっているので、お互いが協調性を保つようになります
協調性は喧嘩をせず、現状維持状態になるので、お互いのメリットになるのです
町で見かける宣伝
冒頭で紹介した
他社よりも1円でも高い場合は、教えてください
他社よりもお得な価格で提供できます
を覚えていますか?
これは、まさに相手が何か仕掛けてくるならこっちも報復に出る、という宣戦布告です
相手が何もしかけてこないなら、協調性を保てるのでお互いのメリットが大きいのです
値下げした時は、需要が増え売上が上がりますが、翌年から商品は値下げしたまま、売上が上がらず利益は下がっていきます
ゲーム理論や囚人のジレンマ、トリガー戦略は色々なところで使われています
ゲーム理論は、経営だけでなく、勝負の世界や遊びの世界でも、様々に使えるのでやってみてください
もし街中で値下競争をみたら、客に言ってるわけではなく、ライバル社に対する戦略だなと思ってください
テレビでやっている携帯3社のCMも、トリガー戦略です
私の予想ですが、ここで予告しておきます
楽天が参入してくると価格破壊が起き、値段が下落していきます。3社なら均衡が保てるのですが、4社になると競争市場になります
4社になるとバランスが取れなくなるんですね。あくまでも私の予想です
まとめ
寡占市場とは、限られた業者のみが独占する市場の事
ゲーム理論とは、お互いの行動が影響しあうので、自社の利益に大きくかかわってくるから、相手に対する戦略を考えること
ナッシュ均衡とは、自分の利益を最大化するための戦略
トリガー戦略は、相手に向けた宣戦布告をすること