外部経済と外部不経済を緩和するにはピグー政策が最適な対策となる

たばこ税がずっと上がり続けている理由は外部不経済を規制するためです。反対に外部経済は環境に良い影響を与え経済を活性化させます。その背景にあるのはピグー政策です。市場の均衡を最適化する方法をグラフを使って解説します。

外部経済と外部不経済の違いとは何かを検索していませんか?

実は簡単でピグー政策を知れば違いはわかるようになります。

なぜなら、たばこの値上がりやエコカー補助金はピグー政策をお手本にしているからです。

この記事では、外部経済と外部不経済の違いや基礎、ピグー政策をグラフを使って解説していきます。

記事を読めば、身近にある外部経済と外部不経済、合理的なピグー政策を理解できるようになります

ポイントは3つです。

  • 外部経済と外部不経済とは何か?
  • ピグー政策は何のために導入するのか?
  • 最適な市場の均衡とはどのようにすればなるのか?

では具体的に解説していきます。

目次

経済に影響を与える外部効果

人や工場、外部に悪影響を与える効果を外部不経済、反対に好影響を与える外部経済、それに伴う基礎知識など解説していきます。

外部不経済とは

国民経済に外部からの要因で害を受けること。需要と供給における取引以外の第3者からの悪影響を及ぼすこと外部不経済と言います。

公害や工場などの廃棄物による害、最も身近に感じるタバコなども外部要因の悪影響と言えます。肺がんリスクが高まり喫煙者よりもむしろ禁煙者のほうが害を被っていると言われています。

完全競争市場では、企業は利益のために相手の配慮を考えず生産を行います。好き勝手にさせておくと、害や損失が出た時に責任追及の特定が困難になります。

なぜなら、直接人間に悪影響を与えている証拠がないからです。

例えば、たばこを吸っていたから肺がんになったと因果関係を結び付ける証拠はありません。

たばこを吸っていても肺がんにならない人もいます。20年後に発症する人もいます。直接的な害で損失を与えた証拠が無いと裁判で立証することが困難なのです。

このように、企業の害が個人に損失や損害などを直接与えた証拠がないため、社会全体に与える悪影響として考える必要があります。

悪影響を規制するために、税金をかけ生産を減らそうとする対策がピグー政策です。

『たばこをやめられない人が多いから、税金で値段を釣り上げ嫌がらせをしている』

そう思っている人も多いかもしれませんが、ピグー政策は悪影響を減らすための対策なので嫌がらせではありません。

このため外部不経済では政府が介入します。

外部経済とは

外部経済とは、国民経済に外部からの要因で良い影響を受けること。需要と供給における取引以外の第3者からの良い影響を及ぼすことを言います。

桜の季節になると花見が多くなり、施設貸出や消費が活性化します。経済に良い影響を与えていることになります。

東京スカイツリーなどがいい例です。観光や店舗が増え消費が活性化します。

この他にも、公園施設の充実、テラス席などの設置、ボランティアなどのイベントなど、人々に好影響を与えるモノはすべて外部経済となります。

このため好影響を与える要因をもっと増やすため、政府は補助金を出して更に拡大させます。

これもピグー政策の一つです。

外部経済を活性化させるため政府が介入します。

外部不経済に影響を与える費用

外部費用

第3者に与えている悪影響のこと。例えば工場などで排ガスや排気物質などを発生させても、一定以上の量でなければ工害と言いません。

ある一定量を越え社会全体や人に悪影響を与えた時に外部費用が発生します。

限界外部費用
害を与える生産を1つ追加した時にかかる費用のことです。
(MEC:marginal external cost)

私的限界費用
企業が負担する外部費用。
PMC:private marginal cost)

社会的限界費用
社会全体で負担する限界費用。
SMC:social marginal cost)

外部不経済=私的限界費用+限界外部費用となります。

外部経済に影響を与える費用

外部不経済とはちょっと読み方が違っているので気を付けてください。

外部便益

第3者に与えている良い影響のこと 。悪影響にかかわらず好影響でも同じことが言えます。

クリーンで排ガスを出さない車、熱中症対策施設、大きな公共の公園など社会経済に与える好影響は外部便益となります。

限界外部便益
利益を与える生産を1つ追加した時にかかる費用のことです。
(MEB:marginal external benefit)

私的限界費用
企業が負担する外部費用。
PMC:private marginal cost)

社会的限界費用
社会全体で負担する限界費用。
SMC:social marginal cost)

外部経済=私的限界費用-限界外部便益

外部不経済と外部経済に共通するのはSMCとPMCの2つだけです。

外部不経済と外部経済をグラフで解説

グラフの基礎解説をしていきますが、SMCとPMCの2つだけ覚えておけば大丈夫です。

それ以外にはでてきません。

外部不経済のSMCとPMC

図ではSMCとPMCは離れています。

社会的限界費用

SMCとPMCが重なると供給曲線となります。供給曲線と需要曲線が交わる点が市場の最適な均衡です。

元の供給曲線に戻すにはピグー政策が必要となります。つまり税金と補助金です。

[box class=”red_box” title=”重要なポイント”]市場の均衡には2つのラインしか存在しません。

需要曲線とSMCとPMCの3本線の市場はありえません。考え方として、必ず需要供給曲線は2本線にする、と覚えておきましょう。[/box]

需要供給曲線に関する記事はこちらになります。

[kanren postid=”4523″]

ピグー税

ピグー税とは限界外部費用 t 円だけ、1個生産するごとに課す課税の事です。PMCに限界外部費用を付け足すことによって、強制的にSMCに引き上げます。

PMCとSMCが重なると供給曲線となります。

ピグー税の問題

政府は悪い公害や汚染物質などを削減することから考えます。そのままにしておくと国民の生活に支障が出てくるからです。

ピグー税は悪い外部要因に課税することなので、この要因が削減されると課税対象が無くなります。

次に、外部要因があると判明したところで、その外部要因に税金の値段を適正に付けられるのか?という問題があります。

悪いといってもどの程度のレベルなのかわかりません。税金をかけるにしても、公平性の問題もあるのです。

外部不経済の市場均衡

グラフでの限界外部費用は一定とします。

企業は利益の最大化を考えます。最大化のため外部への配慮も害も考えません。

利益が最大になれば良い、となるので公害の供給が止まらなくなり外部不経済はさらに活性化していきます。

各企業が出す害を全て合わさると社会的限界費用が必要となり、外部不経済が成立します。そうなると市場の均衡が変化します。均衡とはバランスが取れた状態をいいます。

社会に最適な均衡は点E’です。外部不経済では政府が介入しないと市場の均衡はEになってしまいます。

つまり最適な均衡から外れ余剰の損失が発生しています。

余剰の損失

青の三角形E’EFが余剰損失です。

余剰の損失

つまり点E’を越えて過剰な生産をしているので、価格は安くなり国民や経済に多大な悪影響をあたえています。

損害を抑えるためピグー税を課しPMCのラインを上に持ち上げSMCと重ねると余剰の利益になります。

価格を高くするためにラインは上にあがります。

限界外部費用を付け足すグラフ

余剰の利益

PMCにピグー税を課すことによってSMCのラインが供給曲線となり、E’となるので最適な資源配分が実現します。これを余剰の利益と言います。

黄色い三角形E’点が効率的に望ましいとなり、社会全体が得る利益も最大となり、必要な費用で必要な個数分を、適正な価格で市場取引していることになります。

余剰の利益

価格が上昇すれば購入が下がり、かつ生産も減り社会全体の悪影響は抑えられます。

税金をかけて規制したからといって悪影響は消えません、緩和しただけです。全ての外部不経済を消すことは不可能なのです。

この真逆が外部経済となります。

外部経済のSMCとPMC

図ではSMCとPMCは離れています。これも同じようにPMCをピグー補助金で下げ、SMCと重ねます。

限界外部便益

ピグー補助金

ピグー補助金とは、限界外部便益S円だけ1個生産するごとに補助金を支給することです。

PMCに限界外部便益の補助金を付け足すことによって、強制的にSMCに引き下げます 。

ピグー補助金の問題

私立学校への補助金やエコカー減税などの根拠は、ピグーの理論で成り立っています。

例えば、学校教育が立派になれば卒業した生徒は、社会貢献や社会の教育に良い影響を与えるだろう。このような考えから補助金支給は成り立っています。

次に、仮に外部要因があると判明したところで、その外部要因に補助金の値段を適正に付けられるのか?という問題があります。

良いといってもどの程度のレベルなのかわかりません。補助金支給にしても公平性の問題もあるのです。

外部経済の市場均衡

企業は利益の最大化を考えるので外部への配慮も便益も考えません。

利益最大化だけを考えるので便益の供給が止まらなくなり外部経済はさらに活性化していきます。

各企業が出す利益を全て付け足すと、社会的限界費用が必要となり外部経済が成立します。

社会に最適な均衡は点E’です。外部経済では政府が介入しないと市場の均衡はEになってしまいます。

そうなると市場の均衡が変化します。

PMCは自社の利益だけを追求しているので外部に対する便益は全く考えていません。

つまり余剰の損失が発生します。

余剰の損失

青の三角形E’EFが余剰損失です。

余剰損失2

損失が発生しているので利益最大化にはなりません。

黄色で囲まれている部分が余剰損失を除いた最大の利益になります 。

余剰の利益を最大化させるには、PMCを下げる必要があります。

PMCにピグー補助金を支給することによってSMCと重ねることで余剰の利益を最大化させます。

補助金を支給すれば価格が低くなるのでラインは下にさがります。

余剰の利益

黄色で囲まれている部分が余剰の利益最大化となります。

良い影響を与える外部要因に補助金を支給し、最適資源配分を実現させます。

余剰分析に関する詳しい記事はこちらになります。

[kanren postid=”4824″]

外部不経済にはピグー税を外部経済にはピグー補助金を適用すれば、最適資源配分が実現します。

このような対策をピグー的政策といいましたが、これに対し経済学者のコースは、一定の条件を満たせば最適資源配分が実現できると主張しました。

コースの定理

コースの定理とは、外部の影響を与える者と、受ける者との間で自発的な交渉により最適資源配分が実現する、という定理です。

コースの定理には条件が2つあります。

  1. 権利関係が明確であること
  2. 交渉の取引費用がゼロであること

コースの定理(外部不経済の例)

工場を例にコースの定理を当てはめてみましょう。工場は1単位生産につき t 円だけ地域住民に払うとします。

被害者には権利があり交渉費用はゼロとします。

工場側は、公害を排出するので地域住民の生活に確実に害を与えるのは明確。そこで限界外部費用を1個生産するたびに払うと住民と交渉します。

企業と住民の間で保証金を払うことで交渉成立。

言い換えれば、企業に t 円のピグー税をかけたのと同じことになります。

コースの定理の問題点

公害場合の権利関係は、汚染者側が負担することになっています。法律上、害を受ける側の立場が強いことになるので権利関係は明確です。

被害者との交渉は時間がかかり、費用がゼロになる可能性は極めて低くくなります。

住民といっても何人の保証金を払えばいいのか、現状を把握することが極めて困難になり、保証金が莫大な金額に膨れ上がる可能性があります。

コースの定理は交渉ができれば良いが、出来ない場合の負担が大きすぎることが問題点なのです。

以上まで外部不経済と外部経済となります。現実に世界で発生ている外部不経済とその対策を解説していきます。

世界の外部不経済

世界の外部不経済を一部紹介します。

地球温暖化現象

地球温暖化とは聞いたことがあると思います。

我々が排出する二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが、過剰な排出や蓄積から大気中の温室ガスの濃度を上昇させ大気の温度があがります。

結果、山や氷河などの氷が溶け、海面が上昇し、低地域の土地などは水没してしまうのです。

モルディブのような海面に近い国が消えると言われています。

図の統計データーは今の現状を表しています

温室ガスと排出量のグラフ
https://www.jccca.org/chart/chart01_03.html 全国地球温暖化防止活動推進センター
アクセス2019/8/26
二酸化炭素の経年推移
https://www.jccca.org/chart/chart01_04.html 全国地球温暖化防止活動推進センター
アクセス2019/8/26

気付いていない方が多いのですが、過剰な暑さや寒さになるとエアコンをつけっぱなしで日常を過ごすでしょ。

そうするとガスが外部に排出されるので悪影響を及ぼしてしまうのです。近年、温暖化の要因は、このエアコンが排出するガスだと言われています。

夏になると過剰に暑くなり、世界各国で異常な暑さが記録されていますが、これが原因です。

日本がガス排出を抑えましょう、と世界に提起しました。

京都議定書

先進国全体の温室効果ガスの排出を2008年から2012年までの期間に、基準となる年の5.2%を削減しましょう、とした定義書です。

実は先進国でガス削減を呼び掛けたのは日本が初めてであり、日本は1990年比でマイナス6%を削減しています。

ですが途上国やアメリカは不参加となりました。この途上国というのがインドと中国です。

気付いたかもしれませんが、インド中国は経済成長真っただ中です。経済成長を減速するような呼びかけには都合が悪いわけです。

そこで日本は非常に経済合理性のある制度を導入します。

排出権取引制度

排出量規制を前提に排出量枠を設定し、排出量が少なかった時に、残り枠を他国や企業に市場で売買できる制度です。

例えば日本が毎年100%排出しているが、がんばって10%の削減に成功した。そこで残りの90%枠を売ります。

逆に排出量が多い国は、設定枠以上を持っていないので日本の10%の空きがある枠を買い取り、その10%の中に排出しよう、ということです

極端に言ってしまえば、どこの国で削減しようと地球全体の排出量が減ればそれでいいわけです。

日本などは排出費用が高いのです。なぜなら排出規制が厳しいからです。ガス削減は各企業が極限までやっているのでこれ以上の削減は逆に難しくなるのです。

費用が高い国は排出権を買い取り、ロシアや中国のような排出量が多い国は費用が安いので削減して排出量を売ればいいのです。

ですが近年、ヨーロッパや中国もそうですがガソリン車の廃止を目標として政策を進めています。

日本はまだやっていませんが、電気自動車や水素自動車に関しては、他国よりも技術は先を走っています。

ガソリン規制をかけなくても、自然にガソリンを使わない燃費の良い自動車が出来るのでは?と個人的に思っています。

京都議定書の後継者がパリ協定です。

パリ協定

京都議定書に続く地球温暖化の国際的な枠組みです。

目標設定は、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2度より低くし、1.5度に抑える努力をすることです。

出来る限り早いスピードでガス排出量を抑え、21世紀後半にはガス排出量と森林の吸収量のバランスを取りましょう、という目標です。

一律の規定はなく、各国が国情に応じて自主的に削減を行ってください、という決まりです。

2023年から5年ごとに実地状況を確認して、結果からさらに削減してください、というものです。

協定は発行から3年後に離脱可能となります。目標が不完全でも特に罰則はありません。

実は難点もあり、各国の基準で決めているので削減量が分かりにくいという問題もあります。

意外だったのが、途上国のような中国やインドも参加してきたことです。アメリカは当然のように不参加です(2019/8/26)

このように経済に悪影響を与えているガスは外部不経済になります。

まとめ

外部不経済とは外部からの悪い影響により発生する損害の事である。

外部経済とは外部からの良い影響により発生する利益の事である。

外部不経済のような企業にピグー税をかけることにより最適資源配分を実現させる。

外部経済のような企業にはピグー補助金を支給することにより最適資源配分を実現させる。

コースの定理は利害関係が明確であれば問題無いが、そうでない場合は問題となる負担が大きすぎる。

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この記事を書いた人

ビジネス、経済、心理学、簿記3級、起業、ドラムなど15年以上勉強してきた知識や情報、資格と知識の特化型ブログを発信中。

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