効率性と公平性の観点から最適資源配分や平等を考える

効率性と公平性とは一体何か、実際の社会で問題になっていることや、平等とは何か、最適な資源配分の考え方を解説します

目次

効率性と公平性の観点から最適資源配分や平等を考える

記事の内容

主観的で客観的な公平性と効率性の最適資源配分とは何か

ベンサムの功利主義とロールス基準から平等の定義

効率性と公平性の観点の違いの例や、パレート最適の説明

余剰分析の定義と消費者余剰、生産者余剰と総余剰のグラフを使った説明

厚生経済学の基本定理とは何か

独占企業の余剰分析の問題点とは何か

公平性のローレンツ曲線やジニ係数

ジニ係数を使って、今後IT産業が必要になる理由を論理的に説明します

格差社会の嘘や大企業の学歴外し、ITに求められるスキル

これらを解説します

功利主義(ベンサム)とは

最大多数の最大幸福が全面的な主張となります。つまり快楽や苦痛など全ての合計数字が社会全体の幸福になる、としているからです

ただし問題点もあります

少数の犠牲があっても全体が幸福であればそれでいいのか?
快楽と言っても、種類や質的内容の濃い快楽を最大化すべきでは?
そもそも快楽や苦痛を数字化できるのか?

例えば今日は気分が-50だ
今日は楽しいから+500だ

なんて人の気分を測ることが可能なのか?そんな疑問もあります

経済学というのは、このような功利主義が発展して成り立っているのです

ベンサムが考えた功利主義とは、快楽や苦痛を数字化することを前提としています

ロールズ基準

ロールズ基準の正義に関する2原理を紹介しておきます。公平性を考える上で知っておいた方が良いと思います

第1原理

人は基本的自由に関して平等の権利を持つ。その基本的自由は他人の自由と両立しうる限りにおいて、最大限尊重されなければならない

第2原理

社会的・経済的不平等は次の2条件を満たす時のみとする(格差原理)

1:その不平等が最も不遇な人の利益を最大にする(格差原理)

2:公平な機会均等という条件で万人に開かれている職務や地位に付随するものでしかないもの(機会均等原理)

つまり、自分自身がどのような環境に置かれていても、最も不遇な人々の厚生が最大化されることが望ましい

ベンサムの功利主義が公平性、ロールズ基準が効率性に絡んできます

効率性とは

限られた資源を用いて、いかに大きな価値を生産出来るか

限りある資源をいかに効率よく配分し、利用するのか、という考え方が最も重要です

何故なら資金があっても、資源がないと生産できませんし、資金が無ければ資源を手に入られません 

企業の資金というのは限界がありますが、設備や人材、資金や資源を使って生産性が低い企業と言うのは、効率性を全く考えていないからです

効率性を具体的に

もっと効率性を深く解いてみましょう

効率性を最大化させるための論点は、一人が出来る仕事量、及び生産量をどれだけ拡大できるかが接点になります

一人頭の生産性を向上させるためには、時間配分、スキル能力、作業工程などを重点的に考えることです

経済学の世界では複雑な問題を取り上げることは出来ません。問題を取り上げるときは、テーマを決め、単純にすることで分析していきます

プロジェクトの仮説を単純に分析することが効率性につながります

客観的な目線で、誰が判断しても同じ結論になることを効率性と考えます

公平性とは

生産して出来上がった価値をいかに公平に配分するか

最も最適な所得配分の状態を公平な所得配分とか公平な所得分配と呼びます

公平性というのは、難しい問題です。なぜなら個々個人が感じる主観は違うからです

例えば出来上がったものを分配する時に、Aさんはあまり働いていなかったから、そんなにお金を渡す必要はないとか、割り勘なのにお酒を飲めない人まで、平等に分配されるのはおかしいなど

分配に対する考え方や主観は様々です

このような公平性は、企業などのスキル能力や給料につながります。実力社会の世界なのに給料が上がらずではモチベーションは上がりません

公平性は企業がバランスをとるために、最も重要な論点になります

ですが経済学では公平性という目線で問題を取り上げません。なぜなら人によって主観は異なるからです

個人の主観で絶対そうなる、なんて価値は生み出さないのです

経済学は公平性について扱わないのではなく、扱えないのです

効率性と公平性の観点

効率性の観点で考えると、今3人の土地があります。この土地をどのような道具を使い、かつどれぐらいの時間をかけて耕せば素晴らしい土地になるのか

限られた状態から生産することを考えるので資源配分となり、効率性を重要視します

不平等な3人分の土地

次に公平性の観点で考えてみます。図を見れば分かる通り、3等分になっていません

1つの物をどのように分けますか、と考えるのが公平性となります。公平性と言っても人それぞれ違うので、公平性とはこうだ!と結論付けられないのです

通常に考えれば3等分ですが、考え方はいろいろあります

Aさんは家族人数が多いから、土地を多く分けないと野菜が多く生産できないからAさんには土地を多く分けてあげよう

このように多く必要とする人に多く分ける考え方

Aさんはさぼりがちで、土地を耕していなかった。だから多く分け与える必要はない。頑張った人たちが損するじゃないか

このように貢献に応じて分け与える考え方

Aさんは、子供が病気で看病するしかなかった、だからさぼっていたわけじゃない。ちゃんと平等に3等分するべきだ

このように感情に訴えて平等に分ける考え方

このような状況でも3つの意見がありますし、まだ他にもいっぱいあるでしょう。つまり意見の対立が問題ではなく、価値観の対立になるのです

公平性と言うのは、お互いの意見を踏まえて分け合うことが重要とされるのです

パレート最適

他の経済主体の効用を低下させることなしに、自己の効用を増加させることは出来ない、これがパレート最適です。パレート効率性ともいいます

イタリアの学者パレートが考えた、効率性の最適資源配分のことです

パレート最適は、自分の取り分を多くほしいのであれば、相手の分を奪うしかないんだよ、ってことなのです

なぜなら1つの主体は大きくできないからです。もっと具体的に説明します

Aさんの土地だけおかしなことになっています。Aさんはこのような取り分に、激おこぷんぷんです

ここでAさんは考えます。BさんとCさんから、赤の線が引かれているように奪えばAさんの取り分は3等分になります

さらにAさんは考えます。土地を大きくすれば、BさんやCさんから奪わなくてすむし3等分できる。土地を大きくした分、自分がとればいいではないか

ですが土地は効率的に、かつ最適に資源が配分されているのでこれ以上広げることができない。すでに社会全体の効用は決まっているからです

ということは奪うことでしか効率性が成立しない、ということになります

パレート最適は、大きくした分取るか、他人の分を奪うか、の2つになります

奪い合う

これに関しては政府の責任なのですが、消費税増税により限られた全体の国民所得を奪い合うしかない状態になっています

国民の所得が減りすぎて最適な所得配分になっていないのです

誰かが大儲けをすれば、反対に誰かがド貧乏になっています。詳しい記事はこちらになります

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ここからは効率性の最適資源配分を測る余剰分析です

余剰分析とは

余剰
市場取引で得た利益

消費者余剰
需要者が市場で得る利益

生産者余剰
供給者が市場で得る利益

政府余剰
政府の利益

総余剰
全ての余剰を足したもの。市場取引による社会全体の利益

総余剰が最大=最も効率的=最適資源配分となる

公平性については個人主観なので定義しません

余剰分析を理解するためには、需要供給曲線を知っておきましょう。需要曲線は値段が下がれば需要が増えます。供給曲線は供給が増えれば値段も同じように増えます

交点が最適な市場取引価格です

需要供給曲線

需要供給曲線に関する詳しい記事はこちらになります

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消費者余剰の求め方

消費者は、通常10個で190円なのですが、市場の取引価格が100円なので90円得しました

この90円の利益を消費者余剰といいます

同様に20個の時は180円になるが、100円で買えたため80円の利益となる

消費者余剰

消費者余剰の範囲

赤色で囲まれた範囲が消費者余剰の利益になります

消費者余剰の範囲

生産者余剰の求め方

生産者は、通常10個で10円なのですが、市場の取引価格が100円なので90円得しました

この90円の利益を生産者余剰といいます

同様に20個の時は20円になるが、100円で売れたため80円の利益となる

生産者余剰の範囲

赤色で囲まれた範囲が生産者余剰の利益になります

総余剰の求め方

この世には、消費者と生産者しかいないので、2つ合わせれば総余剰になります。これが社会全体の利益となるのです

厚生経済学の基本定理

総余剰の最大の利益は、100個生産した時に、社会全体の利益が最適資源配分になることです

もし70個しか生産していなかったらどうなるのか

厚生経済学の基本定理

70個になると、総余剰全体の利益は減ります。青の三角の分だけ減ってしまいます。効率の視点から見れば最適資源配分になりません

もし最適資源配分を越えて生産した場合も、同様の減少が起きてしまいます

厚生経済学の基本定理2

100個を越えて生産してしまった場合、130個生産したので130円の費用がかかり、70円でしか売れないので完全に赤字です

130-70=60円分マイナスとなります。最適資源配分―60円となるので、 効率の視点から見れば最適資源配分になりません

このように完全競争市場の分野で、需要供給の交点こそが、最も効率的であり、総余剰の最大であり、最適資源配分が実現されている

これを厚生経済学の基本定理と言います

厚生は、生活の豊かさを表し、厚生経済学は、社会全体の豊かさを表します

市場経済は効率的である、という論拠にもなっているのです

独占市場では最適資源配分は実現しません。それをグラフを使って証明します

独占市場の総余剰

独占市場の需要曲線に関する記事はこちらです。この記事を読んでいないと、分からないと思うので、読むことをお勧めします

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青が限界費用曲線、赤が限界収入です。この2つが交わる点からAの起点が決まるので、P円とQ個が決定します

独占市場の総余剰

このグラフから生産者余剰と消費者余剰が決まります

独占市場の総余剰2

ではここから全体の総余剰はどうなるでしょうか?

独占市場の総余剰3

緑の需要曲線と青の限界費用曲線の点AとQ個のラインCとBの三角地帯だけ余剰すらなりません。このABCの三角形を経済厚生のロス、又は死荷重損失とも言います

消費者余剰も生産者余剰も決まっているのでABC地帯の余剰を取ることは出来ません

独占市場独特に出来てしまう現象であり、誰も悪くありませんが経済的には効率的にならず最適資源配分にもならないので、独占市場に打撃を与えます

よく独占企業は不当に値上げをしている!などと聞きますが全然違います。このように独占市場や独占企業は、自ら損失を被っているのです

ここまでが効率性の解説になります。ここからは公平性の解説になります

所得分配の公平性はローレンツ曲線とジニ係数の2つあります。独占や平等を表すローレンツ曲線から解説します

ただし所得配分の平等度が高ければ公平な所得分配にはなりません

ローレンツ曲線

所得分配の平等度を測定するために、横軸に国民の累計人数、縦軸に国民の所得の累計数にし、両者の関係性を表した曲線です

図を使って解説します

ローレンツ曲線

一番左の点Aから右に向かって点Bまで所得を足していきます。最初は所得が0の人からスタートなので点Aの始まりは当然0になります

点Bに向かって所得をドンドン足していくので、曲線のような形になります。点Bの地点では所得が一番高い人が足されるので点Cまでの高さになります

もし極端に点Aから0がずっと続いて最後の一人だけ所得が付け足されると太い黒の枠線のように逆L字型になります

ローレンツ曲線2

1と0しかないので間の数字は0.0001とか0.01などです。独裁国家などの支配権力は1人になるので、この逆L字型になります

1人だと1になるので1を0で割っても1のままです

次にXの面積に注目してください

ローレンツ曲線3

この曲線が大きくたるむと、Xの面積が大きくなります

ローレンツ曲線4

そうなると点Bの角に向かうことになるのでさっきの逆L字型になり、1になります

ローレンツ曲線5

逆にXの面積が小さいほど、分配度が大きくなり平等になります。その場合は正三角形の形になります

ローレンツ曲線6

こんな感じで正三角形になるので0になります。綺麗に分配されると1人分の数字が無くなるので、0を0で割っても0になります

0になっても三角形、1になっても三角形です

このように線で表したのがローレンツ曲線ですが、欠点があり数字で表現できないのです

世界約200か国の格差を表現するなら、A線B線C線D線のように線が200本必要になり、わけがわからなくなります

ローレンツ曲線を数字で表現したのがジニ係数です

ジニ係数の計算式はXの面積÷三角形ABCの面積で割り出せます

ジニ係数とは

国や民間でいかに所得が平等に分配されたかを測る指標です

独占か平等の指数を0〜1までの数字で表したものです。簡単に言えば格差社会の数字です

1が独占。0が平等です

これらの指標では、北欧諸国は平等が高く、アメリカやロシアなどは平等度が低く、日本はその中間ぐらいです

  • 与えられる時間やチャンスは平等であるべき
  • 頑張った人は平等ではなく個人が得られる利益であるべき

つまり国が違えば、平等という価値観は違います。極端に言えば同じ議題を取り上げても、アメリカでは不公平になり北欧諸国では平等だ!となるでしょう

公平性の視点でIT産業をジニ係数に当てはめてみてみましょう

IT産業が伸びる理由

主要国のIT産業がなぜ必要なのかを証明するために、政府が公開している通商白書概要があります

よくtwitterやブログなどで、IT産業が今後伸びると言われていますが、あくまでそれは憶測で話されているだけで根拠がありません

この記事では統計を基にIT産業が今後重要であることを証明します

主要国では日本を含めICT投資が右に大きくなっています

日本ではITと略されていますが、正確にはICT(information and communication technology)です

このことから言えることは、国民はネットや機械に頼りすぎ、テクノロジー産業無しでは生きていけない時代になっています

情報テクノロジー(IT)の発展により、IT分野が1に近くなるので、格差社会が拡大することを意味します

つまり格差が広がる要因は、テクノロジーマーケット、プログラム、Iotなどを専攻することにより、他の産業よりも所得が開き、平等ではなくなり、ITスキルを身に付けたものは、より大きな利益を得る

IT産業は公平性ではなくなる

IT分野のジニ係数が独占に近くなるので、今後IT産業が伸びると証明できます

大学卒の学歴格差の嘘

今度は左に伸びている大卒比率を見てください

よく社会では学歴がないと、ろくな就職先がない、落ちこぼれなどと言われていますが、表を見る限りでは全く嘘ですね

教育などにより、格差が縮小することはあたりまえです。識字率が高くなるのですから当然です

この結果から言えることは、大学卒業したからと言って、格差が開いていないということです

もし大学卒が格差社会をもたらすのであれば、右に数字が出ていないといけないからです

もはや学歴社会は終わったと言えるでしょう。すでにアメリカでは学歴社会の考えを省き、能力次第で雇用する大手の会社が出てきています

アメリカの求人情報サイトGlassdoorが公開した記事によれば、AppleやGoogleで働くのに“大卒”は必要条件になっていないとのこと。StarbucksやHilton、IBMなども同様です

https://www.glassdoor.com/blog/no-degree-required/

日本も学歴社会の考えをやめ、世界の優秀人材の確保競争にでないと、未来はありません

IT産業に求められるスキル

英語

もはやグローバルになっている環境で、日本の中だけでやっていくことは無理になってきています

それは日本に産業の需要がないからです。特に自動車産業は海外のプログラムを取り入れています。今やマーケットは世界基準です。英語が話せれば、世界の60%をカバーできると言われています

幼児の英語教育はとても大切ですので勉強することをおすすめします

数学

基本的に四則演算(×、÷、+、−)でいいのですが、どの分野でも経済学でも数字化する分析が必衰になります

作業や能力、人の感情や疲れまでも今や、AIにより数字化されています

分野別、段階別に数字化し、対策や改善、戦略を構築していくことです

具体的にはこちらの記事に書いています

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マネージメント

自己管理がしっかりできないと、自分の利益を拡大させることはできません。個人事業主をやるのであれば、管理の知識や、ある程度の経験は必要です

雇用される側であろうと、個人事業主であれば、ネットビジネスで所得を稼ぐことは可能だからです

ですが自分の能力が高くても、売り込みが出来なければ意味ありません

時間やお金を管理できるように、上で説明した効率性の目線を高めていくことです

詳しくはこちらの記事に書いています

[kanren postid=”3505″]

まとめ

効率性とは限られた資源の中から生産性を高めることです

公平性とは分配の比率を主観的に捉えた考えです

独占市場や独占企業は、最適資源配分になっていない

IT産業はジニ係数の1に近づいているので、格差社会が生まれ、IT産業は独占状態になる

学歴社会は、もはや意味の無い世界に突入している

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この記事を書いた人

ビジネス、経済、心理学、簿記3級、起業、ドラムなど15年以上勉強してきた知識や情報、資格と知識の特化型ブログを発信中。

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