公共財とは費用の負担になりえる事と、費用をかけずに自由に共有できる理論を使って企業問題の解決策を考えます。
公共財の最適供給量と市場の失敗とは
記事の内容
公共財の基本的な説明
私的財、クラブ財、共有資源財、国際公共財、地方公共財の具体的な内容
私的財の需要供給財、公共財の個別需要曲線のグラフ
公共財の最適供給量の解説
架空の会社の広告配信問題の解決策
これらを解説します
公共財とは
公共財を簡単に言うと消費の排除不可能性と消費の非競合性という2つの性質を持つ
消費の排除不可能性
代金を支払って需要した人以外の人の利用を排除できない。あるいは排除の費用が高いので事実上排除が困難
消費の非競合性
複数の人が同時に消費し、同じだけのメリットを受けることができる
こんな説明では分からないと思うのでわかりやすく例でいきます
防衛ミサイルで特定の地域を守ってもらうとしましょう。住民が防衛費用を出すので、この地域を守ってくださいと申し入れても、その人だけを守ることは不可能です
地域防衛なのでお金を払っていない人まで守ってしまいます。そうするとお金を払っていない人を排除することはできません。防衛に巻き込んでしまいます
かといって、料金をたくさん出すから特別に守ってくれ、などの競争があるわけでもありません
このことから、お金を払ってない人まで守ってもらうので消費の排除不可能性があてはまり、特別扱いもないので競合が無いことから、消費の非競合性が当てはまります
防衛ミサイルは、政府などの公的機関の供給する財なので、公的供給財といいます
では政府が出すからと言って、公的供給財に当てはまるかと言えば、そうでもありません
公共財の区別
住民票を例にすると、区役所や市役所が住民票を発行しますが、発行元は地方政府です
住民票は料金を払わないと入手できません。料金を払っていない人を排除できます。消費者を排除できるので、公共財にはあてはまりません
公立中学校もそうです。地方政府の市や区が提供していますが、学生でない場合は排除できます。公立学校じゃなくても、私立学校もあるので、公共財ではありません
公的機関が提供しているからと言って公共財とはいわない
このように排除性や競合性による財は4つに分類しているのです。1つは公共財。あと3つを解説します
私的財
- 消費者の競合性がある
- 消費者の排除が出来る
消費者は物を買わないと使えない、買えば使えるので、消費者の排除が出来る。他の人が使っていたら使えないので、消費者の排除が出来る
これは簡単で普段買っている商品ですね、買われたら買えないですし、買わないと手に入れられません
クラブ財
- 消費者の競合性がない
- 消費者の排除が出来る
これは新しい技術などのノウハウが当てはまります。ノウハウを使えば誰でも開発できますが、苦労して開発したノウハウを簡単に人に公表されたのでは、やる気が無くなり開発しなくなります
このような開発者を守るために、特許が存在します。特許があればコピーされても勝てますが、期限もあるので半永久的ではありません
共有資源財
- 消費者の競合性がある
- 消費者の排除が出来ない
これは魚などの海洋資源が当てはまります。魚採るのにお金を払っているわけではありませんし、自由に採れます。かといって海洋の魚を監視などできません
ですが採りすぎると魚たちが激減し枯渇してしまいます。つまり競争にあたります
この他に道路などもそうです。皆さんが普段使っている道路は自由に使えますが、混雑し渋滞になると、排除できず我先に行こうと競争がおきます
こんどは世界に向けた公共財を見てみましょう。これは国際公共財と言います
国際公共財
国際公共財も消費の排除不可能性と消費の非競合性という2つの性質を持つ
平和維持などの治安維持のメリットを、何もしなくても適用されます。平和に金を払っているわけではありませんし、競争しているわけでもありませんので国際公共財があてはまります
他には自由貿易体制などは、世界貿易機関(WTO.world trade organization)が国際ルール作り、紛争解決処理をしているので、その国の貿易を平和に行えるのです
では地域ではどうでしょう。
地域公共財
地域公共財も消費の排除不可能性と消費の非競合性という2つの性質を持つ
よく何気なく皆さんが使っている、公園や図書館などがあてはまります。公園にお金払って遊んでいるわけでもなく、共有しているので競争もありません
スピルオーバー効果と言って、例えば東京都の公園などを他の地方から来た人が使用し、公共サービスを提供し利益を得ることです
では市場はどうでしょうか?私的財と公共財の個別の需要曲線を見てみましょう。
私的財の個別需要曲線
私的財なので個人的に好きな物を好きなだけ買うことを意味します。例えばイノウエ家での需要を考えた時は、20円なら2個買う結果になるわけです。
なぜなら、家計が最大限支払ってもいい価格を意味するからです。
30円だった場合、なぜ買わないのかというと、その財に30円の価値は無いとイノウエ家では考えているからです。20円なら価値が十分あると判断し2個買うのです。
このような評価を限界評価といいます。
消費の排除可能性と消費の競合は、消費したければ自分で買う
公共財の個別需要曲線
私的財は自分で買って消費する、に対し公共財は消費したければ、自分で買わなくても他人の財をただ乗りすればいいとなります。
そうなると、消費が無くなるので需要が無くなります。縦軸の価値のみを表すことになります。
このことから、限界評価は自動的に、2個の場合は20円になってしまいます。つまり公共財の限界評価の価値は、価値のみを表しているとなります。
消費の排除不可能性と消費の非競合性は、ただ乗り状態になる
この2つの関係性から市場の需要が分かるようになります。
市場の需要曲線
私的財の場合は、自分で消費するので需要と価格が連動します。
横軸の需要が増えるということは、家計の需要数字を全部足していけば、市場の需要になるのです。
つまり横軸に増えていきます
公共財の場合は、自分で消費することが無いので需要が連動しません。
需要が減るということは家計の縦軸の価値のみの数字を全部足していけば、市場の価値になるのです。
つまり縦軸の増えていきます
需要供給曲線に関する記事はこの記事を参考にしてください。
[kanren postid=”4523″]
公共財の最適供給量
市場の供給量を見てみましょう。右上がりの曲線を限界費用曲線、右下がりの線を需要曲線とします。
限界費用曲線とは、1個生産するたびにかかる費用の事で、作るたびに費用が増えていきます。
需要曲線は需要が多くなるほど値段が下がっていきます。
社会での1個の値段の事を社会的限界評価と言います。
市場取引において1個目の売上は200円、かかる費用は100円なので100円の儲けとなります。次に2個目の売上は180円、かかる費用は120円なので儲けは60となります。
このように費用は増えていくので、市場での最適供給量は5個が限界となります。市場での総余剰の最大利益は赤で囲まれた三角形になります。
余剰分析の基礎を理解していないと、説明が分からないと思います。
余剰分析や余剰の損失の基礎に関する記事はこちらを参考にしてください
[kanren postid=”4824″]
市場の公共財は失敗する
市場における公共財は失敗します。市場にゆだねても最適資源配分にならないからです
最適資源配分とは、字の書いたごとく最適に資源が分配されることです。
例えばこの世に存在する物や価値というのは、本当に1人だけに限られるでしょうか?
買わなくても、ただ乗り(フリーライド)で得をしている人が大勢います。友達が買ってきたものをシェアしたり使ったり、お金を出さなくても、他人の価値や物でただ乗りしてる方は大勢います
欲しいものを買わない、そこにあるもので済ます、他人のもので補おうなど、市場に任せていても、ただ乗りが増え過少供給になり、市場は失敗してしまうのです
つまり最適に資源が配分されないことになるので、市場に公共財は少なくなってしまうのです。
国地方レベルでも、政府は計画的に供給できません。これは計画経済でも書きましたが、政府が需要供給を計画的に市場を操作する事は不可能です。
なぜなら需要供給の情報を完全に知らないからです。
このことを政府の失敗といいます。では企業で考えた場合はどうでしょうか?企業の公共財を広告に当てはめて考えて見ます。
計画経済に関しては、この記事を参考にしてください。
[kanren postid=”4612″]
今回も架空の会社の問題を、公共財の理論を当てはめて解決します。
今回モデルになっていただいたのはサンダーさんです。電気系エンジニアの方なので、ブログは奥深いです。サンダーさんのブログですサンダーブログ
企業の広告はどの部署が配信する?
現在の企業は、さらなる競争力強化のため、本社共通部門をスリムにして徹底的なコスト削減を行っている
共通部門とは秘書部、総務部、監査部、法務部、財務部、経理部、広報部、業務部の事です
[voice icon=”https://gakureki-zero.com/wp-content/uploads/2020/02/1-4.png” name=”サンダー” type=”l”]今はプログラミングを学習中です[/voice]
電機開発企業は本社広告部門の縮小というテーマがあり、企業広告を各部署で行ってはどうかという提案があった
[voice icon=”https://gakureki-zero.com/wp-content/uploads/2020/02/1-4.png” name=”サンダー広報部長” type=”l”]今回の広告内容は、人手不足のため『優秀な学生を採用する』をコンセプトに考えている[/voice]
[voice icon=”https://gakureki-zero.com/wp-content/uploads/2020/02/1-4.png” name=”サンダー広報部長” type=”l”]電機開発企業は内部の広告配信の体制に2つの問題をかかえている[/voice]
- 企業の広告なのだから、広報部で行うべきだ
- 各部署で割り当てられた予算内で広告を打つべきだ
広告の主な目的は学生採用。今までは学生採用は総務人事室が一括して行い、広告は広報部が行っていた
[voice icon=”https://gakureki-zero.com/wp-content/uploads/2020/02/1-4.png” name=”サンダー広報部長” type=”l”]広告はすべての事業部に関係していることであり、別々に行うと効率が悪いという理由で一括して行っていたが、この際、共通部門をスリム化にするため企業広告を各事業部で行ってはどうかという提案が浮上している[/voice]
[voice icon=”https://gakureki-zero.com/wp-content/uploads/2020/02/1-4.png” name=”サンダー広報部長” type=”l”]どのようにすれば上手く適切に配信できるか考えてみよう。適切な配信を行うため現在の広告市場を確認する[/voice]
日本における広告市場
見てわかるように、インターネット広告がうなぎ上りに上がってきている。ざっと見てわかると思うが、全体の4分の1近くがネット広告だ
現在の広告事情を調べ、電機開発企業は広告をテレビ媒体とネット広告で行うことを検討中である
[voice icon=”https://gakureki-zero.com/wp-content/uploads/2020/02/1-4.png” name=”サンダー広報部長” type=”l”]本社広報部門の縮小の話があり、各事業部が予算内で各自配信すればいいのではないかと、どっちつかずの状態になっている。
実際別々の部署で広告を打つと効率が悪くなるし、各自イメージ広告がバラバラになる[/voice]
問題点は
1.予算の削減
2.広告は学生採用なので各部署が人材を欲しがっている
この2つの問題を解決するためにサンダー広報部長は公共財を取り入れることにした
[voice icon=”https://gakureki-zero.com/wp-content/uploads/2020/02/1-4.png” name=”サンダー広報部長” type=”l”]この2つの問題を解決するために公共財を取り入れれば何かわかるはずだ[/voice]
公共財にイメージ広告を当てはめて考える
消費者の非競合性
企業の好感度のため広告は企業全体のイメージアップとなるので、すべての事業部が同時に利益を受ける。各事業部が競争する必要が無い
消費者の非除不可能性
ある事業部が費用を負担しなかったからと言って、各部署を排除できない。しかも広報部が一括で広告を打つことにより、各部署はただ乗り状態になる
仮に各部署に広告を任せても、他の部署が広告を配信してくれれば、やらなくてもいいなどの思考が働き、過少供給になる
このことから、各部署は人材が欲しいので広告配信はしたい。広報部の予算は削減したい。問題解決の糸口は3つに絞られた
[voice icon=”https://gakureki-zero.com/wp-content/uploads/2020/02/1-4.png” name=”サンダー広報部長” type=”l”]このことから、各部署は人材が欲しいので広告配信はしたい。広報部の予算は削減したい。問題解決の糸口は3つに絞られた[/voice]
- 各部署の競争を無くす
- 過少供給を無くす
- ただ乗りを無くす
問題点3つを解決する
[voice icon=”https://gakureki-zero.com/wp-content/uploads/2020/02/1-4.png” name=”サンダー広報部長” type=”l”]私が出した戦略は以下の通り[/voice]
[voice icon=”https://gakureki-zero.com/wp-content/uploads/2020/02/1-4.png” name=”サンダー広報部長” type=”l”]
- 競争を無くすために、各事業部が集まって、どの程度の企業イメージを作るのかを話し合う
- 広報部の予算を削減するために、過少供給とただ乗りを排除し、各事業部の広告費用負担は平等にする[/voice]
[voice icon=”https://gakureki-zero.com/wp-content/uploads/2020/02/1-4.png” name=”サンダー広報部長” type=”l”]以上の業務を行うのは広報部の業務とする。新たな組織を作るよりも、従来からのノウハウをいかし、広報部が担当したほうが負担や予算の使い方が分かっているので、他の部署が行うより、効率がよい[/voice]
このように公共財を取り入れて考えると、普段何気ない行事や仕事でも、盲点は見つかると思います
まとめ
消費者の排除性や競合性は、私的財、クラブ財、共有資源、公共財の4つに分類できる
公共財は市場に任せておくと、ただ乗りがふえ、過少供給になってしまう
国や政府が予算を持っていても、最適資源配分が上手くいかない