独占市場の需要曲線は価格差別でコントロールしている

独占市場は価格差別で自由に設定できますが、独占の供給による損失がでます。実は独占ではない理由を説明します

このような悩みを持っている方は必読!

独占市場の需要曲線とは何か教えてほしい

独占市場の価格差別とは何か教えてほしい

これらの悩みを全て解決できます。

独占市場は価格差別でコントロールしているが市場を独占することが出来ない

独占市場は需要や価格、供給など自由に設定できるのですが、実際市場を独占できそうかと言えばそうではありません。

供給は1社なので量を自由に設定できますが、一定の量を越えるとかえって費用が増えてしまい、利益を圧迫するはめになります。

実は独占企業は、需要も供給も牛耳ることができず、限界の生産量で価格や個数は決められてしまうのです。

これらを理解できれば問題解決です。

ポイントは6つです。

  1. 独占市場と寡占市場とは
  2. 独占企業の需要曲線
  3. 独占企業の価格と限界収入
  4. 需要の価格弾力性の売上について
  5. DVDコンテンツの価格差別
  6. 独占度の測定 HHI

では具体的に解説していきます。

目次

独占市場と寡占市場とは

ここで独占市場と寡占市場の違いを知っておきましょう。独占市場の定義を理解しておかないと価格差別のコントロールが分からなくなるからです。

寡占市場とは

寡占市場とは、限られた企業だけで作られている市場の事をいいます

わかりやすく言えば、大手携帯3社です。寡占市場は相手が決まっているので、商品戦略を打ち出すと相手企業に大きく影響してしまいます

携帯大手ソフトバンクは寡占市場の一角を担う会社です

過去にiPhoneを独占的に販売したことがあります。このような商品の販売は独占となっていしまいます

なぜなら当時のiPhoneはソフトバンクだけで販売していたからです

つまり会社の立ち位置は寡占です。商品はソフトバンクの独占販売なので独占となります

寡占市場は戦略的相互依存性をもつので関係性は複雑です。相手の行動が自分に跳ね返ってくるので、相手の戦略を予測しながら行動しないといけません

寡占市場の詳しい記事はこちらです

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独占市場とは

独占市場とは言葉通り、1社が市場を独占している状態になります

売り手、買い手ともに多数存在していないので1社のみです
商品の同質性に関しては、1社の品質に限定されます

ライバルがいないので議論が単純になる

自分で価格設定する場合には、独占でない場合であっても、もっとも単純な理論である独占を用いて議論します

このことから言えるのは、市場に対してプライステーカーではなく、プライスメーカーになります

プライスメーカーは、需要と価格を自由に決めることが出来ます。なぜなら競争相手がいないか

それでは独占市場をグラフで解説します。

独占企業の需要曲線

通常の需要曲線は右下になります。販売価格を値下げすれば需要が増えます。結構単純なのでわかりやすいと思います。

需要供給曲線の事に関してこちらの記事に詳しく書いています

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販売個数が1億個なら90円。2億個なら80円。こんな感じで生産数を減らせば価格は下がります

独占企業の需要曲線1

逆に生産量を減らせば、価格10円、20円、30円、と値段を釣り上げることができます

独占企業の需要曲線2

独占市場というのは、自分で数量を決め価格も決めることが出来るので、数も値段も自由に決めることが出来るのです

つまり需要の値段も供給の数も、独占企業がコントロールできるのです

事実上のプライスメーカー

独占企業というのは、需要にそって価格をコントロールすることが出来るため、供給も自由に設定できます

このことから市場に対して独占企業なので、市場も独占することになります。つまり価格を設定する側、プライスメーカーとなるのです

反対に市場の価格を受け入れる側は、プライステイカーとなります

生産量を下げれば価格は上昇し
背産量を上げれば価格は下落する

これが独占市場のルールとなります。

ここで限界費用や限界収入の事を理解しておかないといけません。なぜなら独占市場ならではの不備があるからです。

独占市場は、需要も価格も自由に設定でき市場を独占できると思っているかもしれませんがそうではありません。

大量生産すれば費用が膨れ上がり赤字になるのです。それを説明しましょう。

独占企業の価格と限界収入

生産量を増やせば価格は下がります。

限界収入とは1個生産した時に増える収入の増加分です

限界収入の価格表

生産量1億個の時、価格は90円、総収入は1億×90円なので90億円です
総収入の増加の所に△Rと書いていますが、これはデルタRと呼びます

緑の所の1億個はそのままなので90億円です

2億個は160憶-90憶=△Rは70憶円になります。同様に3億個の210憶-160憶=△Rは50憶円になります

この計算で総収入の増加分は算出できます。黄色の限界収入は簡単で、1億個生産したから原価を割出すには1億個で割る

90憶円÷1億個で=90円となるので限界収入は90円となります。限界収入がマイナスになっているのが分かると思います。

限界収入はなぜ減るのか

先ほど説明した通りデルタRの算出方法は分かったと思います。なぜ限界収入は減少するのか、ということです

重要なのはここからです

本来1億個なら90円の収入なのですが、2億個にすると全部80円になってしまいます。なぜなら90円で売れるはずの商品が2億個生産してしまうと1億個余ってしまうからです

もう1億個売りたいが供給が多すぎるため値段を下げざるをえません。そうなると80円に値段を落とすということは、単価が下がるため収入も当然下がります

個数を多く売るということは、供給が多いので需要がどんどんなくなっていきます。そうなると商品価格を低くするため売れても収益も下がっていきます。

数を大量生産するということは、原材料の値段はそのままなのに商品価格が下がっていくので売れば売るほど限界収入は下がっていくのです

では1億個生産して売ればいじゃない、と思うかもしれませんが一般の商品にそんな数の限定をするほど価値のあるものではありません。誰もが買う権利があります

1億個ピッタリ買う保証もないので、独占企業はコントロールできますが、実はそんな簡単な話ではないのです

ではグラフを見てみましょう。

需要曲線と限界収入

上の限界収入表をグラフにしてみると、生産量を増やすほど1個当たりの利益となる限界収入が下がっています

需要曲線と限界収入

限界収入は赤のラインで、需要曲線よりも角度がついた右下に下がっています。このグラフに限界費用を付け足してみます。そうすることで独占企業は生産量をどれくらい増やせばいいか分かるようになります

限界費用とは、1個増やした時の費用の増加です。ここで簡単に限界費用が変動する理由を説明しておきます

生産過程において、店や工場、農家など他にもいっぱいありますが、ある一定までは大量生産でコストを下げることは可能です

ですが、生産量限界突破を試みるには、更に人、機械、原材料、資本、資金が新たに必要になり、コスト負担が上がってしまします

どの企業でも最低限これまでという限界値があります。限界値を超えて生産するために費用がどんどん上昇していくのです

https://gakureki-zero.com/marginal-cost

限界費用による価格決定

価格決定は限界収入と限界費用が交わる点に決まります

限界点の価格決定

限界費用というのは途中から上がっていきます。なぜかと言えば生産できる限界を超えて更に生産しようとするので、費用が上がっていくのです

限界費用が一番低いラインと限界収入のラインが交わる点Aに生産量が決まるのです。点Aを越えて生産すると、収入が下がっているのに費用がかかるので、Wパンチを食らいます

例えば、限界収入が100円で限界費用が90円なら差引10円の利益が出るのでまだいいのですが、限界収入が90円で限界費用が100円なら差引マイナス10円となり、損益となってしまうので赤字にならないよう個数と価格を決定する必要があります

限界収入は理解できたかもですが、限界費用に関しては基礎を理解できていないと分からないと思うので、この記事を読んで理解してもう一度読むことをお薦めします。

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独占市場の需要の決まり方

需要の決まり方は、限界収入と限界費用の交わる点が価格と個数を決めます

独占市場の需要

独占市場なので需要であり供給でもあるのです

需要の価格弾力性の売上について

この記事で需要の価格弾力性について取り上げているのですが、その部分を再掲します

詳しい記事はこちらになります。

[kanren postid=”4682″]

需要の価格弾力性とは、価格が1%下落した時に、需要が何%変化するか、を表した指数です。例えば


価格:1000円⇒900円に値下げ=100円下落
需要量:10個⇒12個に増加=2個増加
価格の下落率=100円÷1000円×100=10%
需要量の増加率=2個÷10個×100=20%
20%÷10%=2
価格弾力性=2


価格弾力性の数字が1以下の場合は売上が立ちません
価格弾力性が2×1%値下げ=売上増加 
価格弾力性が1×1%値下げ=売上は横ばい(変わらない)
価格弾力性が0.5×1%値下げ=売り上げ減少
需要の価格弾力性>1なら値下げによって売上は増加
需要の価格弾力性=1なら値下げしても売上は一定 
需要の価格弾力性<1なら値下げによって売上は減少

https://gakureki-zero.com/substitution-and-income-effects/

この需要の価格弾力性は値下げに対して説明していますが、値下げをせずに逆に価格を上げた場合を説明します

需要の価格弾力性の値上げ

上の例で説明します

需要の価格弾力性<1なら値下げによって売上は減少
価格弾力性が0.5×1%値下げ=売り上げ減少。1%値下げではなく、2%の値上げをした場合

価格弾力性が0.5×2%値上げ=売上増加となります

価格弾力性の効力が小さいので値上げをしても、需要量が減らないので売上げは増加するのです
高い価格設定が望ましいのですが、低価格でも買わない客もいます

高くても買う人は価格に鈍く、需要の価格弾力性が小さい
安くして買う人は価格に鋭く、需要の価格弾力性が大きい

需要の価格弾力性の大小

需要の価格弾力性が垂直に近いほど、需要は高まるので価格に鈍くなる
需要の価格弾力性が斜めに緩いほど、需要が低くなるので価格に敏感になる

需要の価格弾力性はとても重要なので覚えておいてください

ここまでが独占市場の需要曲線と価格差別の解説は以上です。今度は学習してきたことを活かして皆がよく目にしている商品をあてはめて、価格差別戦略を解説します。

DVDコンテンツの価格差別

DVDコンテンツは、今やエンターテインメントの店頭販売には、必ずある商品です。デジタルコンテンツが主流になり、販売はおろか、ネットの視聴がメインになりつつあります

そんなDVD古くなったり、流行が無くなると安くなっているのを見かけませんか?中古店にもありますし新品なのに1000円で売っている店もあります

これには価格差別の力が働いています

価格差別と聞けば、不当に高い値段で売りつける限られた人にだけ安く売るなどのイメージかもしれませんが違います

実際高い値段で販売すれば売れるでしょうか?指示絶大の人気商品なら売れるかもしれませんが、通常なら高いと売れません

しかもDVDは安くても売れない傾向があり販売は難航します

厄介なのが値下がりした分、利益は少なくなります。しかも大量生産すれば、じつはコスト負担が増え、かえってよくないのです

価格差別とは

同じ商品を異なる値段で販売することです。DVDがいい例でしょう

気を付けることは、異なる企業が同一の商品を、異なる値段で販売しても価格差別になりません

1つの企業が同一商品を異なる値段で販売するから価格差別となるのです

価格差別の条件

異なる市場の需要の価格弾力性が異なる場合

もし、異なる市場の需要の価格弾力性が同じであれば、価格は同じになるので値段を変える必要はありません

異なる市場間で転売が出来ない場合

2つの市場で転売が可能であれば、高い市場では誰も買わないため価格差別が出来きません。理由は簡単で安い市場で買うからです

価格差別戦略

価格差別で販売するには、ポイントを押さえた販売が必要になります

見た目や気分でお客に販売したとなれば、非難殺到します。価格差別戦略は、実は至る所で差別化を行っているので、見てみましょう

  • 海外での価格差別
  • 会員制の料金
  • 時間帯割引
  • 年代割引
  • 日にち割引

海外での価格差別

私は以前、オーストラリアに行った時に、遊園地のチケットを買うことになったのですが、自国民と旅行者では3割ぐらい料金が高くなっていました

旅行者は日数が限られるし、観光や楽しむために来ているのだから、多少高くても買うだろ、というような値段で販売されています

会員制の料金

バーや高級クラブなどは、その典型的な象徴です。スーパーでも会員であれば多少安くなる料金になっています。アマゾンなどのアマゾンプライムは会員限定のサービスです

時間帯割引

夜のディナーより、昼間のランチは安くなっています。時間帯割引ですね。

5時までならハッピーアワーと名付けてお酒が安く飲めます

タクシーなどの深夜割増も価格差別ですね

年代割引

映画など、シルバー割引や遊園地などの何歳以下は無料や低学生料金なども価格差別です

日にち割引

販売日に定価で買わせて、時間が立つと安くなる

価格差別のポイント

価格の需要弾力性を接点に考えます。それぞれの市場で利益最大になるように価格を決定すればよい

需要の価格弾力性が小さい
価格が高くても買うお客さんには料金を高く

需要の価格弾力性が大きい
安くしないと買わないお客さんには料金を安く

ほとんどの価格差別は、安くしないと買わないお客さんターゲットです

DVDコンテンツで最近このような販売がありました

『君の名は』が売れましたね。プレミアム感をつけ、限定コンテンツを抱き合わせて、2万ぐらいで販売してました

つまり、高くても買う人は買う、です。どんなに凄いヒット商品でも時間がたってしまうと価値がなくなってしまいます

時間がたつと、隅っこの方で安く寂しく売られています。この光景を見た時は、スピード販売に乗り遅れたんだなと思ってください

独占市場では、このように在庫があまり残らないように、かつ大量生産で赤字にならないように、値段と需要をコントロールしているのです

もし商品販売を行うなら、批判が出ないように時間軸をずらした価格差別戦略を行ってください

最後にこのような市場を測る独占度を解説します

独占度の測定 HHI

HHIとはハーフィンダール・ハーシュマン指数のことです。舌を噛みそうなのでHHIとします

HHIとは、ある市場における企業の独占度や寡占度・集中度を表す指標です。どれだけ少数の企業で市場を牛耳っているか、を見る数字です

大企業などの合併を認めるかどうかの審査の際に、公正取引委員会は、合併による価格支配力強化による不当な値上げを防ぐため、一定の独占度を超えると審査を開始します

従来は、企業と企業の合併後の市場シェアは10%以下なら審査しないとしてきました

2007年の改正により市場シェアではなく、HHIを採用し、1500以下であれば審査しない、とガイドラインを変更したのです

なぜ採用したかというと、企業の合併した市場だけでなく、他の企業の市場シェアまで計算に入れるので優れているからです

背景には、他の国、アメリカやヨーロッパなどもHHIで見ることが当たりまえになっており、もはや国内で考えるモノじゃなくなったわけです。機械産業やテクノロジーマーケットなどは世界市場になっています

つまり世界市場で考えるべきとなり、世界指数でみるHHIが採用されるようになりました

独占度の計算

市場占有率を表した指数です。その市場に属する各企業のシェアの2乗を合計したものです。計算例を見ましょう

  • 独占企業シェア100%
    HHI=100²=10.000
  • 独占企業シェア50%
    HHI=50²+50²=2.500+2.500=5.000
  • 完全市場シェア0%小企業が無数
    HHI=0²0²0²…=0

3つ目の0は、無数にある企業が持つ支配力というのは、限りなく0に近いということで、0に2乗しても0なので結果0ということです

まとめ

独占市場は、需要や価格を自由に決めることができますが、不当な値段で売りつけると、HHI指数により、調査が入ります

独占市場は需要と値段を、価格差別でコントロールしています

独占企業の値段の設定は、生産費用と生産数を起点に決められている

利益最大にするには、需要の価格弾力性の大小を考えること

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この記事を書いた人

ビジネス、経済、心理学、簿記3級、起業、ドラムなど15年以上勉強してきた知識や情報、資格と知識の特化型ブログを発信中。

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