自由貿易の仕組みは合理的な分担作業で成り立っている

自由貿易はどのようにして利益を得ているのかというと、労働や資本を合理的に考えて分担しているのです

目次

自由貿易の仕組みは合理的な分担作業で成り立っている

[box class=”green_box” title=”記事の内容”]比較生産費を使った貿易の利益や、ヘクシャー・オーリンの定理、合理的な貿易、要素価格均等命題などを説明します[/box]

自由貿易とは

自由貿易とは、他国の貿易を政府が介入することなく、自由に国境をまたいで貿易を自由に行うことです

反対に政府が規制をかけて、自国第一主義で貿易することを、保護貿易と言います

自由貿易が利益を得る仕組みを解説していきます

仕組みを単純化する

経済学では、複雑な現実経済を説明するのは不可能なので、単純にモデル化します

まず貿易は2国間のみとします。生産品もX財とY財の2つのみとします

生産要素は労働のみとし、労働価値説を考慮します。労働価値説とは、生産費や財の価値は労働の数で測定するというものです

例えば、一人の労働が100円とすると、10人で1000円になり、生産の価値も10倍になる。労働者の数の分だけ価値も決まっていくことです

X財Y財が増えても生産効率は変わらないとします。つまり1個生産しても5人、1000個生産しても5人、と決めます

輸送費や諸費用はゼロとし、国際を移動する労働力はないとします

貿易は複雑なので、ここまで単純化しないと説明できないのです

A国とB国の貿易を考える1

A国B国それぞれが、X財とY財を生産するのに必要な労働者を考えて見ましょう

A国の場合
X財を生産するのに必要な労働者は40人
Y財を生産するのに必要な労働者は15人

B国の場合
X財を生産するのに必要な労働者は20人
Y財を生産するのに必要な労働者は30人

このような貿易を考えた時、XとYどちらを輸出し合えばいいでしょうか?

貿易の利益1

A国の場合
X財を生産するのに必要な労働者は40人なので輸入する
Y財を生産するのに必要な労働者は15人なので輸出する(効率が良い)

B国の場合
X財を生産するのに必要な労働者は20人なので輸出する(効率が良い)
Y財を生産するのに必要な労働者は30人なので輸入する

このような考え方を絶対生産費説といいます

効率の良い方を輸出したほうが、お互いが利益を得るわかりやすいパターンです

A国とB国の貿易を考える2

A国B国それぞれが、X財とY財を生産するのに必要な労働者を考えて見ましょう

A国の場合
X財を生産するのに必要な労働者は20人
Y財を生産するのに必要な労働者は40人

B国の場合
X財を生産するのに必要な労働者は10人
Y財を生産するのに必要な労働者は15人

このような貿易を考えた時、XとYどちらを輸出し合えばいいでしょうか?

貿易の利益2

A国の場合
X財を生産するのに必要な労働者は20人
Y財を生産するのに必要な労働者は40人

B国の場合
X財を生産するのに必要な労働者は10人輸出する(効率が良い)
Y財を生産するのに必要な労働者は15人輸出する(効率が良い)

このパターンは結果が明らかで、B国の方が生産性が高く圧倒的に有利です

反対にA国は効率が悪いので輸出するものがなく、B国製品を輸入すると滅びてしまうので

貿易をすべきではないと判断できる

本当にそう言えるでしょうか?経済学の比較生産費説で考えてみましょう

比較生産費説

比較生産費説とは、他国と比較した場合に、自国で生産する財の効率が悪いものを輸入し、自国で生産する財の効率の良いものを輸出する、という説です

経済的利益で考えた場合、どちらを輸出輸入したほうが良いかということです

比較生産の考え方として、まず自国の財を比較します。どちらの方が効率よく財を生産できるか、という点に注目し、他国と比較する

これは英国の経済学者リカードが提唱している理論です

ではもう一度、貿易2で出てきたやり取りを比較生産費に当てはめて考えます

比較生産費にあてはめる

他国と比較するとB国が有利です

A国の場合
X財を生産するのに必要な労働者は20人
Y財を生産するのに必要な労働者は40人

B国の場合
X財を生産するのに必要な労働者は10人
Y財を生産するのに必要な労働者は15人

比較生産で考えるので自国の財で比較してみます

A国の場合
X財20人、Y財40人を割り算で計算します

X財は20÷40=0.5
Y財は40÷20=2
X財の方が生産効率が良いので、X財をB国に輸出したほうが良いとなる

B国の場合
X財10人、Y財15人を割り算で計算します

X財は10÷15=0.6
Y財は15÷10=1.5
Y財の方が生産効率が良いので、Y財をA国に輸出したほうが良いとなる

なんでそうなるの?と思った方もいると思いますので、わかりやすく解説します

輸出の考え方

A国のX財は0.5、B国は0.6となり若干ですが、A国の方が生産性は優れています。そう考えると、効率の良いX財を輸出したほうが良いとなるのです

反対にA国のY財は2、B国のY財は1.5となりB国の方が生産性は優れています。なので、B国は効率の良いY財を輸出したほうがいいとなるのです

輸入の考え方

B国のX財は生産するのに0.6必要となる。A国のX財は0.5必要とする。比較するとB国の負担は0.6かかってしまうので、A国から輸入したほうが良いとなる

A国のY財は生産するのに2必要となる。B国のY財は1.5必要とする。比較するとA国の負担は2かかってしまうので、B国から輸入したほうが良いとなる

そんな貿易してB国にメリットあるの?と思うでしょう。なので別の角度から考えてみましょう

別の観点で考えてみる

比較生産費説はしっくりこず、わかりにくく、理解するのに苦労する人が多いです。これを身近の問題で考えてみます

Aさんの戦闘能力10
Bさんの戦闘能力100
その差10倍です

簡単で誰でも出来る仕事と、難易度の高い難しい仕事があったとします。このような場合、どのように振り分けますか?

Bさんはどちらの仕事もこなすことが出来ますが、Aさんはそうはいきません。そう考えるとAさんに簡単な仕事をやらせた方がいいです

じつはこれと同じことなのです。分担することで機会費用(機会損失)を最大限まで下げるということです

Bさんからすれば、『簡単な仕事もできるけど、その仕事俺がやらなくてもよくね?』となります

だったら難しい仕事をやってもらって簡単な仕事をAさんにやってもらった方が効率もいいし、分担の考え方が合理的です

機会費用にかんする記事はこちらになります

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B国にメリットはあるのか?に戻りますが、一見B国だけで生産したほうが効率がいいに決まってると思われがちです

だからと言って、何でもかんでも生産すればいいというわけではありません

何か捨てることで、分担作業を効率化し、お互いにメリットがあるほうが合理的でしょう。というこです

比較生産費説の問題点

現在の生産要素としては、資本が充実しており、設備や機械による生産性が飛躍的にアップしています

つまり比較生産費説は、生産要素や商品価値を労働の数で決まる。と論じていることが問題なのです。でも昔は本当に労働で決まっていたのでしょうがないです

商品の価値というのは、労働の数で比例するのではなく、人が商品に対する満足感で決まる効用効果です

効用効果に関しての記事はこちらになります

[kanren postid=”4682″]

現代の生産要素をヘクシャー・オーリンの定理で解決することが出来ます

ヘクシャー・オーリンの定理

ヘクシャー・オーリンの定理は、資本豊富国などは資本集約財に優位に立ち、労働豊富国などは労働集約財に優位に立てるという定理です

労働集約財とは労働を多く必要とする財の事
資本集約財とは資本を多く必要とする財の事

資本豊富国というのは、資本を大量に必要とし産業が成り立っている国を言います。先進国がそうです。つまり資本主義国です

労働豊富国というのは、労働を大量に必要とし産業が成り立っている国を言います。発展途上国がそうです。アフリカや東南アジアなど

資本よりも労働の方が相対的に多く存在する労働豊富国は、賃金率が資本を投ずる価格より低い

ということは労働を多く必要とする労働集約財の方が比較生産費が低くなり、比較優位となる

一方、労働よりも資本の方が相対的に多く存在する資本豊富国は、労働を投ずる価格が賃金率より低い

資本を多く必要とする資本集約財の比較生産費の方が低くなり比較優位となる

解りにくいですね(自分で書いてわけがわからなくなった)。 例で行きましょう

バングラデシュと日本の貿易

バングラデシュと言えば人口過密が有名で、労働人口も大量に溢れている国です。つまり労働豊富国です

労働が多く余っているのであれば、資本を投じて産業をするよりも、労働を大量に投じて、衣服や綿製品など生産しているほうが効率的です。なぜなら賃金率が安いからです

日本で言えば、人口はバングラデシュほどいるわけではなく、資本が大量に溢れている資本豊富国です

資本が多く余っているのであれば、労働を投じて産業をするよりも、資本を大量に投じて、車や電子機器を生産しているほうが効率的です。なぜなら生産費が安いからです

これらの事を踏まえて貿易を考えると、資本を投じてバングラデシュに車や電子機器を作らせるより、衣服などを生産させた方がいいのです

もちろん日本も衣服や綿製品は作れますが、資本を豊富に持っている国なので、車や電子機器を作っているほうが比較的に有利になるのです

ということは、車や電子機器をバングラデシュに輸出し、衣服や綿製品などを輸入したほうがお互いのメリットになり、利益にもなるのです

効率のいい分担貿易をしているのです

要素価格均等化命題

ヘクシャー・オーリンの定理で色々なことが分かってきました

労働豊富国には労働を使った産業を活性化させ、資本豊富国は、資本を使った産業を活性化させてきました

ですが、近年過剰な労働産業が成り立ってしまい、労働賃金率が上がってきているのです

資本国も過剰な生産を投ずるあまり、資本の価格が上がってきているのです。生産量が多くなると、設備投資(資本)にお金がかかってしまいます

良い例が中国です。昔は世界の工場と言われるほど、労働も工場も多くありましたが、過剰な労働生産が成り立ってしまったため、労働賃金が上がり始めたのです

貿易が活性化したこにより、生産性要素の労働賃金や資本利子率が上がり始め、資本豊富国と労働豊富国の価格差が縮まってきています

このように要素がだんだん均等化し始めることを、要素価格均等命題と言います

そのせいで各国は中国から撤退しています。日本も撤退している企業は毎年増えています

海外移転を考えるなら

中国の人件費高騰により企業が撤退しています。そこで次に目を付けたのがベトナムです

なぜベトナムかというと労働人口が多く、賃金が安いからです

1つ忠告しておくことがあります

工場などの移転を海外に置くのであれば、労働賃金が安いだけを考えてはいけません。労働人口も考慮することです

なぜなら人口が少ないと、すぐ労働賃金が上がってしまい、撤退することになるからです

年間生産する量と労働人口の比率をよく考えて移転を考えるべきです

まとめ

貿易の利益を上げるには、比較生産費の優位性を考えること

比較生産費が低い製品を輸出したほうが、効率のいい分担作業になる

ヘクシャー・オーリンの定理は、資本豊富国と労働豊富国の2国の優位性を生かした理論

貿易は資本と労働をうまく考慮すればお互いにメリットがある

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この記事を書いた人

ビジネス、経済、心理学、簿記3級、起業、ドラムなど15年以上勉強してきた知識や情報、資格と知識の特化型ブログを発信中。

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