債券価格と金利の利子率の変化や利子率の計算の仕方、流動性選好理論をもとに利子の決定を説明します
[box class=”green_box” title=”記事の内容”]債券と利子率はどのようにして変化しているのか
利子率への考え方や利子率の減少関数
コンソル債の理論価格
貨幣需要を表す取引需要と資産需要
資産需要のグラフや実質貨幣供給量のグラフ、この2つを組み合わせた利子率の決定
これらを解説します[/box]
債券とは
国や企業などが資金調達のために発行する引換券だと思ってください。お金の代わりにこの券を発行し、投資家からお金を借ります。満期になると返済する時に利子を付けて返すということです
他人に譲渡できる借用証明書みたいなものだと思ってください。 今は電子取引なので債券市場での売買が行われています
債券は発行券の代名詞なので国は国債、企業は有価証券(株)です
債券市場の良いところは、債券を買っていても途中でお金が必要になったときに、他人に売却することが出来るので、お金の即効性があります
もちろん価値の変動があるので、売却時の価値によって損得はでます
図はイメージですので実際は異なります。こんな感じで必要事項は明記されていますよってことです
利子率と債券価格
単純に考えて100万円の債券を買ったのだから価値は100万円に決まってると思うかもしれませんが、そうじゃないんです
実は購入した後の世の中の利子率(金利の動き)によって債券の価値は変わってしまうのです
この辺は理解できていない方が多くいるので、しっかり理解していきましょう
上のイメージ図をみると、金利が10%!ってなりますが、それは金利が10%の時に借りたからです。ただそれだけです
金利が10%なんてマジ!と思うかもしれませんがバブル崩壊前の日本は金利が8~10%は普通だったのです
今でこそ金利は1~0%ぐらいですが、昔を考えると異常ともいえます。それは置いといて仮の話でいきます
Aのパターン
債券を発行した時金利は10%だった。なので発行時は10%の確定利子率でお金を借りました
ところが景気変動により、5年後世の中の利子率が1%まで下がってしまいました。ということは金融商品や定期預金など、その他も1%になってしまった
ですが、昔発行した債券は10%のままなので、かなりの魅力があります
周りの利子率が下がると、確定利子率の魅力が上がるので債券の額も上がっていきます
100万円の債券を120万円で買って100万円しか戻ってこなくても、毎年10%の利子が貰えるなら高くても買うのです
世の中の債券利子率が下がっていくと債権の価値が上がって魅力が増すので、債券の価格が上がっていきますよってことです
Bのパターン
逆に、債券を発行した時金利は10%だった。なので発行時は10%の確定利子率でお金を借りました
ところが景気変動により、5年後世の中の利子率が20%まで上がってしまいました。ということは金融商品や定期預金など、その他も20%になってしまった
ですが、昔発行した債券は10%のままなので、魅力が全くありません
周りの利子率が上がると、確定利子率の魅力が下がるので債券の額も下がっていきます
そうなると100万円の債券は欲しがりません。90万円まで下がったら買う方も出てくるでしょう。だって90万で買えば100万円で返ってくるのであれば、利子が低くても買う価値はあります
これが債券価格と利子率の考え方ですが、重要なポイントがあります
利子率の考え方
重要なことは利子率が変化しました、ということは確定利子率が変動したことではありません
確定利子率なので、お金を借りる時の契約で決まっているので変動することは出来ません
そうではなくて利子率が変動する時というのは、債券を発行したい後の、世の中の利子率が変わったということです
確定利子率は変動しません。債券価格が変動する時は、世の中の利子率が変動した時です
これをしっかり理解しておかないと、ごちゃ混ぜになってしまいます
利子率の減少関数
減少関数というのは2つの数や関係が真逆に動く関係性の事です
- 現実の利子率r が上がると⇒ 債券の確定利子率の魅力度はマイナスとなり、債券価格は下がります
- 現実の利子率r が下がると⇒ 債券の確定利子率の魅力度はプラスとなり、債券価格は上がります
このことにより債券価格は減少関数といえます。片方が上がると、片方が減るといった感じです
コンソル債の理論価格
コンソル債というのは、期間が永久である債権の事です。昔イギリスが借金に追われて発行した債券の事です
期間が永遠ということは返す必要が無いわけです。ですが期間が永遠ということは永遠に利子を払い続けることになるのです
先ほども説明した通り、利子率は世の中の変動によって変わるので、売るに売れない状況になるので難しいという面もあります
例えば、レンタルDVDを永遠に借り続けて、毎日レンタル料払うなんて地獄でしょう
計算式としては債券価格Pとした場合、毎年得る確定利子率Rを市場利子率rで割ればいいのです
これがわかれば、資産の理論価格も分かるようになります
資産の価格計算
毎年10万円の地代を永遠に受け取ると考えた場合、土地の価格はいくらになるのか。市場利子率は1%(0.01)とします
この公式に当てはめてみると
これが資産価格の理論値となるのですが、必ずしもこの通りなるとはかぎりません。なぜなら商業地域となって土地が値上がったり、銀行が調子悪くなって金融危機が起こるとかで価値は変動します
ですが理論値は大事なのです。今の土地がバブルか否かを決めるのに理論値が基準となります
基準値より上であればバブルであり、下であればバブルではない、ということになります
分析する場合の単純化
資産には、貨幣、債権、不動産、株式、金融商品など色々な資産があります。経済学は物事を単純にします
多くあると複雑になるので、資産と貨幣の2つしかないと仮定した上で説明します
貨幣は安全資産とします
債券は価格が変動するのでハイリスク・ハイリターンとしての資産とします
なぜ債券がハイリスク・ハイリターンなのかというと、債券価格というのは市場利子率が逆に動きます
市場利子率が下がると債券価格が上がります。市場利子率が上がると債券価格が下がります
しかも利子率というのは日々動いています。となると債券価格は逆に動きます。債券も株のように動いているので、安い時に買い、高い時に売って利益を得る、という投機の対象になるのでハイリスク・ハイリターンとなるのです
この逆に動くという理論が、この後の説明で重要な意味を持ってくるので覚えておいてください
流動性選好
流動性というのは貨幣の持つ利便性、つまり貨幣は何でも交換することが出来、価値が安定しています
そもそも流動性というのは液体を意味し、貨幣は社会を液体のように流れている利便性のあるのもの、と考えます
利子というのは、貨幣の流動性が持つ対価だと考えます。例えば、レンタルDVDという便利な物を借りているのでお金払います
それと同じで、お金という便利な物を借りたのだから利子を払いましょう、ということなのです
流動性選好の事を英語でLiquidity Preferenceというので、貨幣需要の事はLと表すことが多いのです
ケインズの貨幣需要
ケインズが考える貨幣需要は3つ定義されています
取引的動機
取引のために貨幣を持つことです。例えば現金は持っているけど特に使うことはない。コーヒーやご飯代ぐらいです。何か買うためにとりあえず持ってる
予備的動機
万が一の取引に備えて貨幣を持つことです。例えば雨や嵐がきて電車が動かなくなった時に、タクシーで帰る、ホテルに泊まる、など何かに備えて持っておくことです
投機的動機
債券などで一儲け考えている人が債券や株を買って市場で取引することです。債券の価値が下がる前に売ったり、安い時に買ったりと価値を持っている時に貨幣にした方が良いという考えです
後のケインズ派が2つにまとめます
2つの貨幣需要
結局、取引的動機と予備的動機は、わかっている取引か万が一の取引なので、1つにまとめて取引需要L1となります
分かっている取引も万が一の取引も、取引きのためにお金が必要なんじゃないか、となるので同じと考えます
そうなるとGDPなどは取引が増えれば、経済が活発になります。そうなるとお金が沢山必要になるので取引が増えます
GDPが増える=取引需要が増える、となります
このように2つの取引が同時に増えることを、増加関数といいます。減少関数の逆です
投機的動機は資産需要L2となります
投機していても、債券を再び売るのであれば、貨幣を資産として持ちたいわけです。ということなので資産需要となります
貨幣の資産需要は利子率の減少関数となるので、利子率が下がると貨幣の資産需要は増えることになります
めんどくさいと思いますが理解してください
資産需要L2の減少関数
流れにそって説明していきます。上でも説明した通り単純化のために貨幣と資産しかないと考えます
- 世の中の利子率が下がると
- 債券価格が上がります
- 債券価格が上がると、高い時に売りたいので債券を売ります
- 売られると債券の需要が下がります(債券が溢れて価値が下がるため)
- 債券を売ると貨幣の需要が上がります(貨幣を資産として持ちたいため)
- 貨幣の需要が上がると、利子率が上がるので債券価格が下がります
- 債券が下がると、安い時に買うので債券価格が上がります(需要が増えるため)
- 債券価格が上がると利子率が下がります
- 1に戻ります
減少関数というのは、このように変動しています
右下がりの資産需要
利子率が下がると資産需要は増えます
縦軸に利子率、横軸に資産需要で表すと、利子率が下がると下に動き、資産需要は増えるので横に動きます
資産需要曲線は右下がりになります
水平の資産需要
この水平は特殊なケースです。r0のもうこれ以上利子率は下がらないとなると、資産需要は無限大に増えていきます
なぜかと言うと利子率が最低ということは、これ以上下がらないので債券は逆に動くため債券価格が打ち止めとなり、そこが価格最高値となるので、売りにでます
そうなると資産需要は無限大に増えていく、となるのです
貨幣需要L
資産需要L2に貨幣の取引需要を足すだけです。単純に考えてL1が50だとします。GDPがY=100の時は、L2にL1を足すだけです。つまり斜めの状態で横移動する、ということです
ここは難しく考えず、足せば横移動すると覚えてください
実質貨幣供給量のグラフ
実質貨幣供給量というのは、名目貨幣供給量を物価で割ったものです。ものを何個買える分の貨幣量かということです
名目貨幣供給量は中央銀行が一定にコントロ―ルしていると仮定します。一定になる理由は、給料が2倍に上がっても、物価も2倍に上がれば同じことになります
貨幣供給の記事はこちらになります
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貨幣も物価も同じとなるので一定としているのです。では一定となった場合のグラフはどうなるのか
単純に真っすぐになるだけです。10%の時も貨幣供給は同じ、5%の時も貨幣供給は同じ、なので軸は真っすぐになるのです
利子率の決定(流動性選好理論)
では利子率はどのようにして決まるのか。貨幣需要Lと実質貨幣供給量を2つ組み合わせてグラフを作成します
利子は貨幣の持つ流動性への対価と考えます。お金借りるから利子を払う、お金のレンタル価格と考えます
貨幣の供給量が減ると利子は増える
貨幣の供給量が増えると利子は下がる
貨幣の供給量が増えると超過供給となり、借りたい人が減るので利子率が下がります。利子率が下がるとEに戻ります
貨幣の供給量が減ると超過需要となり、借りたい人が増えるので利子率が上がります。利子率が上がるとEに戻ります
このようにして利子率は決定しているのです
まとめ
貨幣需要には取引需要と資産需要がある
利子は貨幣のレンタル価格と考えるので、貨幣供給量によって利子が変わる
資産価格は毎年得る利益を市場利子で割ればいい
流動性選好理論によれば、利子率は実質貨幣供給量と貨幣需要が等しくなる水準で決まる