ハイエクとフリードマンの思想とは何か、その思想を知ることで新自由主義の定義がわかるようになります
ハイエクとフリードマンの思想が描く新自由主義とは
[box class=”green_box” title=”記事の内容”]2人の時代背景や思想を解説します
ハイエク思想の新自由主義とフリードマンの新自由主義は違います
フリードマンの考える教育バウチャー制度、金融政策のK%ルール、負の所得税
これらを解説していきます[/box]
ハイエクの時代背景
1899年ウィーンに生まれます。この時代に生まれたことが彼の思想に大きく影響していると言えます
この時代のウィーンといえばオーストリア帝国の崩壊の時代です。帝国の権威が低下したことにより、ハイエクは権威を懐疑的な目線で見るようになります
またアメリカでは世界大恐慌が発生し、ハイエクは人為的な 中央銀行の政策ミスが原因と考えます
それと同時に社会主義がどんどん盛り上がっている時代でもありました。共産主義運動や軍国主義運動などです
この軍国主義がのちのヒトラーを生み出します
ハイエクは当初は経済理論が中心でしたが、次第に社会哲学や心理学にも領域を広げています
実は、ハイエクとケインズは経済学の対立した関係でした
ケインズ経済学の記事に関してはこちらです
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世界大恐慌時に、経済が回復するまで処方したのがケインズ経済学であり、アメリカは見事デフレを脱却しています
ですがハイエクの場合、この時の経済学は何とかなるんじゃないの、みたいな考えだったので見る影もなく消え去り、ハイエクの経済理論は評価されませんでした
後に社会哲学や心理学の視点から経済学を提唱したので、再び脚光を浴び始めます
ハイエクの思想
ハイエクは、人間は自己の利益を追求する経済人と仮定します。人間の合理性に関して疑問視しています
人間は全ての行動に合理的な判断はできない。このことをポピーの可謬主義といいます
可謬主義
どのような理論をもっていても、どこか必ず間違っている可能性がある、というものです
人間が全て正しいとは限らないので、情報は不完全であり、不確実である、人は正しく行動できないので間違ったり、模索しながら生きている
これらがハイエクの思想となっています。これらをもとにハイエクは新自由主義を唱えます
ハイエクの新自由主義
ハイエクが新自由主義を唱える思想があります
『エリートの全てが大衆より正しいわけじゃない』
その根拠としては、その場にある全ての情報が正しいわけではない、という理由があるからです
どういうことかというと、市場というのは分散化された情報を処理しているに過ぎない、言葉や文脈によって変わってしまう
このことをポラニーの暗黙知といいます
形式知:言葉で表すことができる知識
暗黙知:言葉で表すことが出来ない体の動作
市場というのは、安定して均衡しているわけではなく試行錯誤の結果変化している。経験を通じて出来る習慣、これを自生的秩序といいます
つまり現場を知っている大衆の方が暗黙知を熟知している、現場を知っているからこそ経験を通じてわかることがある
その反面、現場を知らない形式知だけで語るエリートが全て正しいわけじゃない
その他にも、ハイエクは秩序というのは設計して作るものではなく、経験を通じて社会や大衆の合意を得て秩序は自然に作られていく
設計というものは目的があり、綿密な計画や緻密な考えの元作られるが、自由基盤は、自然発生や経験からくる法律的な禁止で成り立っている。むやみに自由を奪う禁止ではない
個人は正しいかどうかわからないからこそ選択の自由が必要なんだ、と言っており、これがハイエクの新自由主義の基盤になっています
ハイエクはこのような考えの思想でした
敵対する古典派経済学は、人は賢く、合理的で情報も全て持っている。需要と供給のバランスが良く、市場も均衡している、を前提としています
ハイエクの新自由主義は古典派経済学とは違います
フリードマンの時代背景
1912年にアメリカに生まれました。世界大恐慌時は大学院生であり、大恐慌の発端は中央銀行のミスと考えます
これはハイエクと同じ考えです。ハイエクと大きく違うところは、経済人は合理的、という点です
フリードマンの思想は、人は合理的な考えで動くため、人や政府は間違いを起こさない、という考えなのです
政府の肥大化は無責任な資源配分を引き起こすので、市場に任せるべき、というのはアダムスミスと同じ考えです
人というのは合理的に利益優先で動く生き物だ、政府は効率的にしても利益は増えない
つまり民間企業の場合は効率的に考えないと利益は増えませんが、政府はもともと税金で賄われるから、利益を優先するインセンティブがない
これらはフリードマンが考える新自由主義の根底にあるものです
フリードマンで有名なのが教育バウチャー制度、金融政策、インセンティブを重視した負の所得税です
この3つを解説します
教育バウチャー制度
フリードマンは公的な財政支援をやめて、生徒の保護者に授業料の割引券を渡して、生徒と保護者の選択の自由を確保すべきだと主張しています
割引券を配分することをバウチャー制度といいます
これを主張する背景には、質が高く、教育制度が充実している強い学校が生き残るようにするためです
競争上、質の低い学校は淘汰して質の高い学校を残そう、という制度です
日本でも教育関連に関する制度を政府が議論していますが、実行されたことはありません
なぜなら公立学校の選択性が公立学校の競争を促しているからです
フリードマンの金融政策
フリードマンの金融政策は、価格や物価の伸縮や情報の不完全を前提としています
国民は貨幣量を増やすと、給料が増えたと思いこみ実質賃金が上がったと思って、消費が拡大し失業率が減ります
ですが時間が立ち給料が上がったと思っていたら、物価も同時に上がっていた、となり結果何も変わらない、そして元の状態に戻る
このことを自然失業率仮説といいます
なので失業率は一時的には減るかもしれないけど長期的には戻る、主張しており
金融緩和に至っては、裁量的金政策というのは、悪い時に実行しても効果が出てくるまで時間がかかってしまい、景気変動の時にその効果が出てくるので、逆に政策が経済を不安定にしている
そうじゃなくて、経済成長に合わせて一定の貨幣供給量を調整すればいい、というのが彼の金融政策です
このことをK%ルールといいます
実際日本でも、円高不況時に裁量的金融政策を実行した結果、バブルを引き起こし、金融引き締めを実行したらバブル崩壊して、景気変動が物凄い乱高下してしまい、経済が不安定になりました
ですが、アメリカ9.11のテロの時に、裁量的金融政策を実行し4ヶ月ぐらいで経済が安定した結果もありますので、フリードマンが正しいというわけではないのです
負の所得税
最低限の所得を保障する生活扶助制度、日本の場合だと生活保護です
生活保護というのは、働かなくても一定額はもらえるわけです。ですがあんまりよくないと言われています
なぜなら働いた分のお金が入ってこないので勤労意欲が働かないからです
つまり働けるようになっても、働いた分だけ支給額が減るので働かないほうが得になるからです
今の税金というのは、高額所得者から多くの税金をかけて取り、低所得者に取った税金を分配しています。そのかわり分配してもらうには条件もそれなりにあります
負の所得税というのはちょっと違います。少しでも働いた分の利益は上乗せした状態で支給してもらえるようにしようというものです
例えば、最低所得ラインが10万だとしましょう。あなたが今月10万稼げなかった。働いたが4万しか稼げなかったので税金は取れません
政府はマイナス所得税として、その半分の+3万円を支給します。そうなると7万円となるので過疎分所得としての金額が上がります。これが負の所得税の主張なのです
10万円に届くまで働こうと労働意欲が働きます
負の所得税の問題点
実は、これを採用している国はどこもないのです
なぜかというと、所得の正確な確認が前提となるからです
税金の申告をごまかしたり、銀行決済の記録に残らないようにしたり、企業が結託して所得をわざと低くしたり、とそんな人たちに逆にお金を支給するのはリスクが高すぎるからです
今の段階では負の所得税の導入は危険なのです
可能性としては、マイナンバーのシステムがしっかりして、お金の入出金が明確に分かるようなり、個人の所得がはっきり分かれば、負の所得税の導入もありるかもしれません
代わりに注目されているのがベーシックインカムです(ベーシックインカムの説明は省きます)
まとめ
ハイエクの自由主義というのは、人は必ず正しい行動や合理的な判断で決断しているわけではないので、経験から学ぶことが重要としている
エリートは大衆よりも正しいというわけではない
フリードマン自由主義は、人は合理的な判断が出来る前提なので人の判断に間違いはないとしている
フリードマンの掲げるには教育バウチャー制度、金融政策のK%のルール、負の所得税などがある